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会長からのメッセージ −その3−

「生態士」

漢字変換すると別の職業になってしまうが、生態士である。
こういうものを作ろうというアイデアは10年以上も前からあった。生態士は社会的に認知された資格であり、これを持っているとあちこちの就職にはずいぶん便利である。一部の自然再生事業やなんかは、資格者がいなければ認可されないから、生態士は企業などからもひっぱりだこである。生態士の資格をとるには、日本生態学会の主催する講習会に出席し、修了書を取得しなければいけない。「生態学入門」「生態学事典」などなどが参考図書として使われるだろう。受講料、手数料、等も当然いただくことになる。これらは講師謝礼等にも使うから、ポスドクの人たちの格好のアルバイト先も確保できる。定職を準備できるかもしれない。当然、学会にもお金が入ってくるから、毎年の大会は参加費無料くらいにはなるんじゃないか。

 こういったことは、ここ10年以上も茶飲み話や酒席の話題として語られてきた。しかし、それだけだった。その間、実現の方向に顔を向けたり、一歩進めるということはなかった。その間に、他の団体では、森林インストラクターだとかビオトープ管理士などいろいろの資格が作られていたのに。われわれは、思いつきは早かったけれども、酒席の話題にしている間に周回遅れになってしまった。このままでは、生態学会というのはアイデアはよく議論はするが、実際に論文を書いたり、実行したりはしない、口舌の徒の集まりと言われかねない。ウーん、実はこれかなり当たっているのか。だいぶ克服してきたつもりなのだが。

   たしかに、お金を扱うには法人化してからのほうがよいし、資格をオーソライズして貰うにはお役所に働きかけてからのほうがよい。しかし、実体が何もないものを、オーソライズのしようもないではないか。ということで、とりあえず、なんの権威にも結びつかなくても良い、単なる紙切れの発行から出発しようというのが私たちの考えです。最初は、生態学会が主催して、講習会を開催し、その修了書を発行するというカンジですね。もちろん、単なる紙切れであっても、それを目標に勉強してみようという人たちはおられると思います。それを徐々に、実質の伴うものにしていけばよいのではないでしょうか。

   ここで確認しておきたいことは、私たちの最終目標は、生態学の正しい知識を世の中に普及し、生態系修復などに携わる人たちに、正しい生態学の知識の上に立って行って欲しいというところにあります。それが、教科書の売れ行きにつながったり、院生の就職口につながれば、大変結構なことですが、それはあくまで副産物であって、それ自身が主な目的ではありません。

   具体化については、次回の常任委員会で議論することとし、それまでに矢原委員が案を固めてくださることになっています。それにしても、よいネーミングはないでしょうかね。

 その2にお知らせした、編集委員長の公募案については、大串現編集委員長が公募要項(案)を作成してくださいました。現在、これをもとに事務局で案を練っています。これも次回の常任委員会で審議し、全国委員の審議・承認を経て、公募するという運びになると思います。 2006.6.19