目次へ

会長からのメッセージ −その61−

「常任委員会の報告」

 先週土曜日(12月8日)に京都に集まり、私の任期では最後の常任委員会を開催しました。

 前回の委員会から今回までの間の大きなイベントとしては次々期会長と次期全国委員の選挙が行われたこと、名簿が作成されたこと、矢原新会長によって新しい常任委員が選ばれたこと、宮地賞などの受賞者が決まったこと、Ecological Research誌の出版社の入札があったこと、日本生態学会誌の編集委員長が交代したこと、そしてなにより法人化のための定款案などが作られ、具体的で確かな一歩を踏み出したことがあります。

 次々期会長には中静透さん、次期全国委員には若い清新な顔ぶれが、そして常任委員も大幅に入れ替わる予定です。幹事長は後1年留任していただくことになっていますが、次期幹事長候補もすでに決まっています。法人になりますとこれらの方々は理事長、専務理事、常任理事、理事などと名前が変わりますので、いまの名前での最後の役職となります。申し遅れましたが、私自身も今月いっぱいで退任ということになります。

 なんといっても法人化への歩みが少しずつではありますが着実に進んでいます。前にも書いたことですが、日本生態学会は会員が4千人、会費収入だけでも年に4千万円に達します。その他に会誌売り上げなどを含めますと、事業収入が大台に達するわけですね。その他に、宮地賞、大島賞などの基金も持っていて、法人でなければ社会的説明がつきません。こういった大きなお金を会長個人名義でやりくりするのは大変不便です。したがって、来年4月には定款案を審議していただき、来年12月には法人登録しようというわけです。登録は簡単なようですが、公益性が認められ、税制上の優遇措置が受けられるかどうかは審査を通らなければなりません。審査はその法人が公益的と認められるような事業を全事業の半分以上行っているか、にかかっています。

 学会の事業なんてどの学会も似たようなものだ。大会に集まって、研究発表し、雑誌を発行して論文をだす。参加した個人に経済的利得があるわけじゃない。したがって、公益性のハードルなんて楽にクリアできる。ところが最新の情報では、大会や雑誌発行は会員だけを対象としたものであるからして、公益性があるとは言えないのだという。他の多くの学会では大慌てで、大会などの通常の学会活動も公益的事業と認めて貰いたい、という要望を出されたり、これから出そうとしているという。生態学会が属している、「生物科学学会連合」でもそういう動きがあるという。常任委員会でも、公開講演会などの公益性のある事業に力を入れなければならないね、といった議論をしました。

 しかし、ここで立ち止まって考えてみる必要があるでしょう。私たちが「公益社団法人」を目指しているのは、私たちが生態学を勉強していくなかで、研究成果を社会のために役立てるにはさまざまな公益的事業を行う必要がある、と考えたからにほかなりません。決してその逆ではない。法人化するためには、かれこれの事業を行わなければならないのではなく、あれこれの事業を企画・実行するには法人になることが便利であり、必要なわけです。それらの事業のうち一部はすでに実行されていますが、一部はまだ企画段階です。これらの事業を実際化していくのが、これからの仕事になります。「大会も公益的と認めて欲しい」というのは、ちょっとどうかと思います。もしそんなことなら、法人化を取りやめてもよいのです。不便もあり、税金も取られるかも知れないが、それは仕方のないことです。

 常任委員会で議論した公益的事業は公開講演会、生物多様性に対する企業活動への支援(企業が生物多様性保全活動をしようとしたときにアドバイスする)、出版活動(生態学会で出版事業を行うのではなく、出版社にアドバイス等を行う)、授賞活動(学会員だけを対象とするのではない賞を設ける)、生態環境士(自然再生ハンドブックの解説会からとりかかる)などです。

 公開講演会はすでに10年の歴史があります。企業に対するアドバイスは福岡大会でフォーラムが行われます。出版活動は「生態学入門」「モノグラフシリーズ」などで実施中、なのですが滞りがちというのが現状である。授賞は前回のメッセージに書いたものなどがその例です。生態環境士は道筋は出来ているが、肝腎の本がまだ・・・といったところが現状。

▲キバナノアマナ 春先、雪解けとともにエゾエンゴサクなどと混じって咲く



トップへ