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会長からのメッセージ −その62−

「最後のご挨拶」

 私の任期は余すところ10日を切りました。カウントダウンが始まっています。

 このメッセージを書くのと、日本生態学会誌に2年間を振り返ってという文章を書く、それから科研費の通帳を解約するのと、最後に前々回にお知らせした、生態学琵琶湖賞の段取りをつける仕事が残っています。後の3つはどうやら新年以降にずれ込んでしまいそうです。

 僕がはじめて生態学研究センターの教官として赴任したときには、先任の教授として井上民二君などという人がいました。この人はボルネオ島にでっかいウオークウェイを作って、樹冠観察を始めたり、国際生物多様性観測年を作ろうと呼びかけたりとすごく企画力や実行力のある人だった。また後からやってきた中野繁君などという人は、企画力だけでなく、体力、馬力のすごい人で、みるからに筋肉隆々、苫小牧の川に延々とカバーを掛けて、落下昆虫が入り込まないようにしたらどうなるというような実験区を作ったりと、度肝を抜くようなことを企画し、実行していた。それで僕はこんな人たちにはかなわないなあと観念し、自分でできることをこつこつやるしかない、ということを信条としてやってきたのでした。

 しかし世間は僕が自分の殻にこもっていることを許してくれず、日本生態学会の幹事長を文字通り押しつけられ、同時に近畿地区会の会長もやっていた。それが終わったと思ったら、イワサ会長からさまざまな役職を命じられ、とうとう会長まで務めることになってしまったというわけでした。これでいちおう学会役員双六は「あがり」ということにしていただけるのかなと考えている次第です。

 企画力に富まず、実行力に欠ける私ではありましたが、なんとか「あがり」にまでこぎ着けられそうなのは、自分の能力の足りなさを自覚し、回りの人たちに仕事をお願いし、また回りの人たちが助けて頂いたおかげであると深謝申し上げる次第であります。

 ところで前回、法人化後に公益性のある仕事だと言えるものを何点かあげました。そのうち公開講演会は私が川那部会長時代の常任委員だったころに提案し、第1回の実行委員長になって開催したものです。前の年の第1回宮地賞受賞者であった工藤岳君に講演をお願いしたことを覚えているから、宮地賞と同じだけの歴史がある。それから、出版事業としてはいろんな出版物が企画されているが、私はそれにもいくらか執筆している。そして最後に書いた「賞」に関しても、現在私が調整中である。ということで、企画力に富まず、実行力にも乏しい私ではあっても、実は公益的事業として挙げたもの全てに関わっている。それなりに貢献しているじゃないか。と最後の最後に自慢をして、引き下がることにしよう。

 と書いてから、韓国生態学会会長のチョエさんからメイルで、発行されているJournal of Ecology and Field Biologyという雑誌はEAFESの後援する公式雑誌の一つであるからして、日本生態学会でも編集幹事や編集委員を推薦せよと言ってこられる。ただボードに名を連ねるのではなくて、日本からも論文を出すように努力せよということである。そういえば、新潟での会議のときに、a journal sponsored by EAFESというふうにaを付けて下さいと提案したことを思い出す。Ecological ResearchだってEAFESの公式のジャーナルなんだ。どのように共存するかが問題だけれども、JEFBのほうは記載的な論文も載せるのだという。このように競争しながらも共存できたら素晴らしいことである。僕は生態学には記載的な研究が必要だと思うので、是非協力しなければと考えている。その他に来年の学会で表彰する功労賞をどうするかは、旧執行部で決めなければならない。あれこれ積み残しを抱えたまま新年を迎えることになる。

 この「メッセージ」は昨年の常任委員会で、学会のホームページをいくら整備しても、定期的に更新されるようなものがないと、頻繁には見て頂けないという意見が出たのに応えて、会長の私がそういった欄を作ろうということで始めたものでした。何人かの方から「読んでいる」とか「面白い」とかあるいは、毎日更新せよなどのメイルをいただきました。「面白くないから止めよ」というのは、表だっては無かった。それをよいことに、学会の運営に関係のないことまで書きすぎたのではないかと懸念しています。励ましのことばにのせられて、そのまま続けて参りました。事務局の鈴木晶子さんは、いつも原稿をチェックするとともにホームページに登載していただいた。常任委員の皆様、全国委員の皆様、各種委員会の皆様お世話になりました。読者の皆様、生態学会の会員の皆様有り難うございました。

 これをもちまして最後の挨拶とさせていただきます。

▲最後だからとっておきの挿し絵をと探したけれども、どこかへ行ってしまったようだ。最初からなかったのかもしれない。では皆さん良いお年を。



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