日本生態学会

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会長からのメッセージ -その2-

「EAFESに参加して思う」

 本年4月21日から23日にかけて、名古屋大学でEAFES(East Asia Federation of Ecological Society)国際大会がありました。EAFESは巌佐会長時代に、中国生態学会、韓国生態学会、台湾亜熱帯生態学会、日本生態学会が集まって設立され、2004年から隔年で大会が行われてきました。今回で8回目の大会になります。日本での開催は、新潟(2006年)、大津(2012)に続いて3回目です。前2回は生態学会大会と合わせて開催しましたが、今回は生態学会大会と独立して開催しました。本大会と切り離したため、どれくらいの参加者が参加されるか、当初は大変不安でした。しかし、フタを開けてみたら、10カ国から300名の参加者があり、大変盛況な国際集会となりました。詳細については、EAFES実行委員会からの報告に譲りますが、ここでは私が感じたことと、EAFES運営委員会で決まったことを報告したいと思います。

 EAFES大会の良さは、2014年と2016年に当時の斎藤会長が会長メッセージとして2度に渡って述べられています(http://www.esj.ne.jp/esj/message/no0405.html、http://www.esj.ne.jp/esj/message/no0418.html)。読み返してみると、斎藤会長が述べられたことが、今回、身をもって感じることが出来ました。

  • 風通しが良くフレンドリーな雰囲気、
  • アジア地域の研究者と知り合いになれる、
  • 各国で行われている研究プロジェクト等の様子がわかる、
  • シンポジウム形式なので普段あまり聴く機会のない研究発表も聞ける、
  • コミュニケーションが英語なので心地よい緊張感と充実感が味わえる、
  • ヒアリなど時宜にかなった問題の情報交換が行える、

 などなど、いつもの生態学会大会とは異なる経験が出来る大会と感じました。大学院生にとっては英語で研究発表し、質疑応答をする絶好の機会になったと思います。雰囲気だけについて言えば、会員数が多くなかった頃、昔の生態学会大会に近いかも知れません。

 近年、生態学会大会は大規模になり、なかなか小回りが効かなくなっています。この規模であれば分野外の研究者ともすぐに知り合いになれるし、地方都市でも開催出来るでしょう。自然や郷土豊かな地方都市でのEAFES開催は、各国の研究者や学生をお招きする絶好の機会になるかも知れません。

 アジア地域の研究レベルは高くないので、EAFESに参加しても学術的なメリットはあまりないんじゃないかという声を聞くことがあります。しかし、侮ってはいけません。中国を筆頭に、アジア地域の研究水準は年々向上していますし、光る研究も多く目につくようになりました。実際、生態学のA級ジャーナルの目次を見ると、日本人の著者はいないけど、中国を始めとするアジア地域の著者の論文を目にすることはもはや稀ではありあません。日本の研究者にとって、生物多様性や外来種の研究で中国大陸を視野に入れることは、研究の深みやスケールが増す可能性が十分にあります。ピュアな研究課題だけでなく、生態学が貢献出来る各国の環境問題の現状を知ることも、大きな刺激になるでしょう。研究を飛び越えた難しい問題があるかも知れませんが、特に若い研究者にとって、中国やアジア地域の研究者と仲良くなっておけば、将来、自身の研究展開や人材育成に役立つはずです。そのためにも、EAFESを利用しない手はないでしょう。最終日、中国における生物多様性保全策に関するOuyang Zhiyun次期中国生態学会長のプレナリー講演を聞きながら、そのように感じました。

 会期中にEAFESの運営会議が行われ、主に以下のことが合意されました。

  • EAFES会長は中国、韓国、日本の各学会が持ち回りで担当することになっています。その順番から私がこれから2年間、EAFES会長を務めさせていただくことになりました。EAFES事務局長には引き続き中野伸一さん(京都大学)にお願いすることになりました。
  • 中国生態学会が刊行しているEcosystem Health and SustainabilityをEAFESの公式ジャーナルとすることが各国の生態学会長の間で合意されました。EHS誌は米国生態学会との共同出版雑誌として2015年に刊行されましたが、ビジネス的な理由から、現在は中国生態学会のみが出版母体となっているようです。EAFESがEHS誌をサポートするのは私達にもメリットがあり、EAFES諸国が共同でEHS誌に特集号を出する場合、その出版費用は中国生態学会が引き受けるとのことです。もし、そのような論文集(特集号)を検討している研究者がおられましたら、生態学会事務局にお知らせ下さい。
  • 次回、第9回EAFES大会は、2020年9月20-22日に中国の内モンゴルの古都Hohhot(フフホト)市で開催を予定しています。シニアも若手も、大学院生も奮ってご参加下さい。大会前日は、大学院生を対象にしたワークショップを共同で開催しようとのアイデアも出ています。

 最後に、中国・韓国の研究者と共同でシンポジウムを企画していただいた会員の皆様、ユーモアを交えながらすべてのセレモニーを取り仕切っていただいた中野伸一理事、EAFES開催を成功に導いていただいた湯本貴和大会長、てきぱきと大会を仕切っていただいた中川弥智子実行委員長、忙しい中で手間のかかる準備と心温まる運営をしていただいたすべての大会実行委員会の皆様に深くお礼申し上げます。

EAFES8

前列右より:占部城太郎ESJ会長、湯本貴和ESJ副会長、中野伸一ESJ理事、Chang-Seok Lee ESK前会長、Eun Ju Lee ESK監査役 後列右より:Shiroung Liu ESC理事長、Ouyang Zhiyun ESC副理事長、Liding Chen ESC書記長、Jae Geun Kim ESK会長

2018年5月14日 会長  占部城太郎

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