日本生態学会

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会長からのメッセージ -その8-

保全誌のオープン化について

 日本生態学会は2つの和文誌、日本生態学会誌(生態誌)と保全生態学研究(保全誌)を出版しています。このうち、生態誌については、会員は郵送料を負担すれば冊子体を購読することができ、掲載された論文・総説については、会員以外も出版と同時にJ-stageを通じてオンラインから制限無く読むことが出来ます。生態誌の編集に関わる経費は学会費と非会員への雑誌売上で賄われています。学会員のメリットは、生態誌に無料で論文や総説、記事などを投稿出来ることです(ページ制限を超えた場合には超過ページ印刷代の負担があります)。会員の権利ですので、学会員が主催する大会でのシンポジウムや研究会のアウトプットとして、是非とも生態誌を利用していただきたいと思っています。

 一方、保全誌については生態学会とは異なる母体から出発し、生態誌とは異なる歴史を有しており、主に非会員からの冊子体購読料によって編集費が賄われてきました。そのため、出版して2年間は非会員へのJ-STAGEでの無料(無償)公開を見合わせており、保全誌に掲載された論文や総説をすぐに読みたければ、冊子体を購読する必要がありました。しかし、保全誌には地域の保全や環境・自然保護に関する行政にも示唆を与える成果が掲載されるため、投稿者からは行政や一般市民に早く成果がとどくよう、ネットでの無償即時公開を望む声が寄せられてきました。確かに、研究成果を生態系管理や地域行政に具体的に役立たせるためには、最新の成果を提供するなどスピード感が重要になるはずです。また、公的資金で行われる研究成果は広く公的な財産であり、その成果を速やかに一般社会に公開することは、アカデミアとして重要な使命といえるでしょう。

 このような背景から、保全誌もネットでの即時公開を行うことが2年前から検討されてきました。ここでいう即時公開とは、非会員でも論文が公開されたらネットですぐに読めるという意味です。即時公開を行う場合、冊子購読者が減ることが予想され、従来のように購読料で編集費を賄うことが出来なくなります。生態誌とは出発点が異なるため、編集に関わる費用を会費以外から得ることも考える必要があります。そこで、予算面で会員に負担をかけずに、どのように保全誌を即時公開することが出来るかを、保全誌の小池編集長、久米出版担当理事、黒川会計担当理事、北村俊平前会計担当理事に検討していただきました。その結果、非会員による投稿を可能にして投稿料を頂く、会員による投稿は、ページ制限を超えた場合には超過ページチャージを頂くといった料金体制を作れば、編集経費を賄うことが出来るとの報告をいただきました。投稿料やページチャージ料は、他学会の例を参考に、投稿者の許容可能な金額を想定したものです。

 このような予算的な枠組みを整備することを前提に、先の理事会において保全誌もネットでの即時公開を行うことを審議していただき、その方向性が承認され、J-STAGEにて最新号より全て無料(無償)公開しました。ただし、事務的な作業や投稿規定変更などの手続きがあるため、オープンアクセス誌としての仕組みが完成するのは約1年先になります。詳細についてはこれから詰めて行くことになりますので、この件について、もし良いアイデアや建設的なご意見があれば、小池編集長ならびに保全誌各編集委員にお寄せください。学会としての予算という制限はありますが、サービス向上のためにも皆様のご意見を反映させたいと考えています。

2019年8月2日 会長 占部城太郎

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