日本生態学会

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会長からのメッセージ -その1-

「就任のご挨拶」

 2020年3月の第67回日本生態学会名古屋大会代議員総会で一般社団法人日本生態学会の代表理事(会長)に就任いたしました。よろしくお願いいたします。

 新型コロナウイルスの影響によって、名古屋大会本体を中止せざるを得なかったことは非常に残念であり、大会実行委員会委員や学会理事をはじめとした会員のみなさまには苦渋の決断を受け入れていただきました。占部城太郎前会長のご提案で、代議員総会および大会のハイライトである受賞講演会は3月7日にネットでライブ配信することになりました。学会史上初の試みでしたが、ライブ配信にあたって名城大学が会場提供、京都大学生態学研究センターが技術的サポートをご快諾いただき、予想以上の成功を収めたと思っております。日野輝明実行委員会大会会長、橋本啓史大会実行委員長をはじめ名古屋大会開催に向けてご尽力いただいた関係者のみなさまに、この場をお借りして深い感謝を申し上げます。

 この新型コロナウイルスによる全世界を巻き込む社会的脅威は、これまで人類の経済発展と福祉向上を支えながらも、地球環境問題とよばれるさまざまな軋轢をもたらしてきたグローバル化のひとつの帰結としても捉えられます。ヒトの力が地球全体に甚大かつ不可逆的な影響を与えつつある人新世(Anthropocene)において、生物圏をメインにして水圏・大気圏・岩石圏との相互作用、あるいは生物間相互作用や人間社会との関係を総合的に扱う生態学の役割は、ますます重要性を増していることは疑いがありません。すでに生態学において基礎分野と応用分野という区分はボーダーレスとなっており、フィールド、実験、理論というさまざまなアプローチを総動員して、生態学とその関連分野の学問的基盤を底上げしながら、社会的な要請に応えていく必要があります。

 ビッグデータやAIに代表される情報技術が急速に発展し、複雑系を複雑系として学問的に取り扱うことができるようになりつつある現代では、もともと複雑系を扱ってきた生態学への期待が高まっています。ここでは生態学はひとつの学問分野(Discipline)に留まらず、さまざまな学問分野をつなぐ学際的(Interdisciplinary)なハブとしての役割が求められており、さらにはさまざまなステークホールダーをつないで学問的な枠組みを共にデザインしていく超学際的(Transdisciplinary)なコーディネータの役回りが求められる場面が増えると予想しています。実際に一部の会員では、すでに動きが始まっています。

 このような高度な要請に応えるためには、まず学問として個々の実力を研ぎ澄ませること、つぎに人的なネットワークを強化することが肝要です。日本生態学会は、会員みなさまの研鑽の場をともに創り上げていくとともに、会員同士の交流の場、さらには生物科学学会連合(生科連)の一員として他学会との交流の場を拡げていくことで、生態学と社会の発展に貢献したいと考えています。同時に、男女共同参画や若手キャリア形成のお手伝いなどを通じて、生態学を担う会員みなさまのお役に立てる活動をやっていく所存です。これから2年間、みなさまのご協力とご支援をお願い申し上げます。

2020年3月23日 会長 湯本 貴和

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