25-29 Aug 2004

The 51st Annual Meeting of the Ecological Society of Japan (JES51)

Kushiro Tourism and International Relations Center

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Proceeding


JES51 Executive Committee
updated at 16:54 08/10/2006
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[proceedings] 公募シンポジウム S02

8 月 26 日 (木)
  • S2-1: ()
  • S2-2: Conservation and sustainable use of Inner Mongolia grassland using GPS/GIS/satellite imagery integrated data (Kawamura,Akiyama,Yokota,Yasuda,Tsutsumi,Watanabe,Wang)
  • S2-3: Metapopulation dynamics of a stream-dwelling salmonid: analyses and modelling of long-term data (Koizumi)
  • S2-4: Damming and the decline of freshwater fish diversity (Fukushima)
  • S2-5: Analysis of tree community based on long-term and large-scale monitoring data (Masaki,Shibata)

14:30-17:30

S2-1:

(NA)


14:30-17:30

S2-2: Conservation and sustainable use of Inner Mongolia grassland using GPS/GIS/satellite imagery integrated data

*Kensuke Kawamura1, Tsuyoshi Akiyama1, Hiro-omi Yokota2, Taisuke Yasuda3, Michio Tsutsumi4, Osamu Watanabe5, Shiping Wang6
1River Basin Research Center, Gifu University, 2Graduae School of Bio-agricultural Sciences, Nagoya University, 3Division of Natural Sciences, Yamanashi Institute of Environmental Sciences, 4National Institute of Livestock and Grassland Science, National Agricultural and Bio-oriented Research Organization, 5Laboratory of Levee Vegetation Management, National Agricultural Research Center for Western Regions, 6Institute of Botany, Chinese Academy of Sciences

 大面積で起こる生態学的現象を長期的に評価・定量化しようとする場合,衛星リモートセンシングは有効なツールである。衛星リモートセンシングの主な利点に,大面積を面データとして定量化する広域性と,過去のデータにさかのぼって年次変動をモニタリングする長期的観測が可能な点があげられる。また,地理情報システム(GIS)およびGPSと組み合わせて利用することによって,より的確な予測モデルの構築が可能になると考えられる。
 中国内蒙古草原では,1950年代以降,過放牧の影響による草原の衰退および砂漠化の問題が深刻化している。この草原の保全と生産性の維持は,適切な放牧管理によって得られると考える。本研究は「中国内蒙古草原の保全と持続的利用のための定量的評価法の確立」を目的として,1997年より岐阜大学流域圏科学研究センターと中国科学院植物研究所の共同研究として進められてきた。具体的には,その草原がもつ家畜飼養可能頭数を地域別に提示できる牧養力推定マップの作成を最終的な目標としている。調査地は,近年特に土地の荒廃化が著しいシリン川流域草原(約13,000 km2)に設定した。
 これまでに,空間分解能30mをもつLandsat衛星を用いた過去20年間の土地被覆分類と,空間分解能は250-1100mと粗いが毎日データ取得可能なNOAAおよびTerra衛星を用いた草量・草質の推定と年次変化モニタリングを行った。この結果,1)1979年以降,放牧に適した草原は減少傾向にある。2)採草地における草生産量は気温と降水量の影響を強く受け変動する。3)放牧地における各時期の草量および草質は,放牧圧の影響を強くうけることが示唆された。現在,衛星から判読困難な羊群の採食の影響を評価するため,羊にGPSと顎運動測定器を取り付け,羊の空間的な分布と採食パターンから放牧強度の定量化を試みている。発表では,これまでに得られた結果を紹介し,衛星リモートセンシングの大規模長期生態学における利用可能性について考察する。


14:30-17:30

S2-3: Metapopulation dynamics of a stream-dwelling salmonid: analyses and modelling of long-term data

*Itsuro Koizumi1
1Hokkaido University, Field Science Center

本講演では、大学院時代から調査を続けている河川性サケ科魚類のメタ個体群構造およびその動態について、現在までに得られた知見を紹介する。また、この発表を通して、個人レベルで長期データを集積することの難しさ、および研究分野間のリンクの必要性などにも言及したい。
北海道空知川に生息するオショロコマは本流では産卵せず小さい支流でのみ産卵するため、一本の支流を局所個体群の単位と捉えることができる。各支流では産卵メス数が10−20個体と非常に少なく、一本の支流のみで個体群を長期間維持するのは難しいかも知れない。そこで、空知川水系のオショロコマがどのような個体群構造を呈し、どのようなプロセスを経て長期間存続しているのかを知ることは個体群生態学上、非常に興味深い。
まず、マイクロサテライトDNA解析を行ったところ、各支流個体群は独立して存在しているわけではなく、それらが個体の移住を介して水系全体でメタ個体群構造を形成していることが明かとなった。また、ここで遺伝的分化が認められなかった近接支流間でも、個体数変動は同調していないことが7年間(4支流)の個体数調査から示され、ここでもメタ個体群構造の仮定が満たされた。次に、メタ個体群の特徴である局所個体群の”絶滅”および”新生”が起きているかどうかを、81の支流におけるオショロコマの存在の有無から検証した。ロジステイック重回帰分析の結果、小さい支流では絶滅が起きている可能性が高く、よく連結された支流では絶滅後の新生率が高いことが示唆された。
以上のDNAおよび野外データからHanski(1994)のパッチ動態モデルを構築し、メタ個体群動態のシミュレーションを行った。解析の結果、メタ個体群動態は上流域と下流域で2分されることが示された。さらに、オショロコマの長期存続のためには、この2つの地域を連結する中流域の小支流も重要であることが明らかになった。


14:30-17:30

S2-4: Damming and the decline of freshwater fish diversity

*Michio Fukushima1
1National Institute for Environmental Studies

 ダムによる流域の分断が淡水魚類に及ぼす影響を、北海道日高地方と北海道全域の2つの空間スケールを対象に、一般化線形回帰モデルによって定量的に評価した。日高地方では計125の地点において魚類採捕を行い、魚種ごとの生息密度に対するダムの影響を調べた。北海道全域では、過去40年間の魚類調査をデータベース化(文献数約900、調査件数6674、地点数3800)し、淡水魚の種多様度と種ごとの生息確率に及ぼす影響をみた。日高地方では4種の通し回遊魚(アメマス、サクラマス、シマウキゴリ、エゾハナカジカ)の生息密度がダムよって著しく低下していた。このうちはじめの2種(いずれもサケ科魚類)は魚道のないダムによってのみ影響を受けていたのに対して、残りの2種は魚道の有無にかかわらず影響を受けていた。淡水魚の種多様度については標高、流域面積、調査年などの説明変数に加え、ダムによる分断の有無が有意に影響した。ダムによる種多様度の低下量は全道平均で12.9%に及び、標高の低い地域ほど低下量が大きく、河口域の低下量は約9種に達した。河口堰の淡水魚類への影響が、いかに甚大であるかが分かる。得られた回帰モデルを元に、全道でダムによる魚類の多様度低下の現状をGISによって地図化した。また、全43種の淡水魚を個別に調べてみると、26種に対して、その生息確率が何らかの影響を受けており、うち10種は直接にダムによって生息確率が有意に低下していることが明らかとなった。中でもウキゴリ、ジュズカケハゼ、エゾハナカジカなど、小型の通し回遊魚への影響がやはり著しかった。既存の魚道はサケマスなど遊泳力のある魚類を対象に設計されてきたため、小型のハゼ科、カジカ科などの魚類に対しては効果が期待できないことが推察される。ダムによる分断は淡水魚の密度、多様度、種の分布すべてに対して負の影響を持つことが立証された。


14:30-17:30

S2-5: Analysis of tree community based on long-term and large-scale monitoring data

*Takashi Masaki1, Mitsue Shibata2
1Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council, 2Forestry and Forest Products Research Institute

 長期的に維持されているプロットで研究することは楽しい。その理由の最たるものは、なんといっても豊富なデータを思う存分解析できることである。しかし、たった一つのプロットでも、このような状態までもっていくことは大変な労苦を伴う。立ち上げから数年間は、毎週のように通わなければならない。学生はともかく、いろいろな雑用をかかえている研究者には重荷である。それを乗り越えて成功するためには、いくつかの条件がある。最も重要なこと、それは「チームでやる」ことである。一人ではしんどいことも、みなでやればやり遂げることができる。
 もう一つの条件として、具体的すぎる目的を設定しないことだと思う。欧米の気温の観測や太陽の観測などを見ていると、西洋では100年を越える長い測定が伝統のようになっていると思う。そこにあるのは、特定の現象を重点的に知りたい、という態度ではなく、目の前にあるものの姿をじっくりと記録したい、という、対象に対する畏敬の念から発しているような気がする。私には、長期観測研究が本当に長期たりうるか否かは、この辺に鍵があるように思う。
 以上のことを、我が身を材料にして、具体的に語ってみようと思う。事例は私が関わった小川学術参考林、とくにシードトラップを用いた長期観測データを解析した結果である。小川学参の種子生産の長期データから一体何が見えてきたか?いろいろと試行錯誤もあった思惟のプロセスを紹介してみたい。時間に余裕があれば、カヌマ沢渓畔林試験地における10年間の研究や、昭和初期から続いてきた試験地を引き継いで楽しんだ経験なども紹介したい。
 最後についでながら一言。一般論として、長期試験地の維持など役人は関心がないことを認識しておこう。なぜなら2年間で次のポストに異動していく彼らにとっては、1年後の課の予算獲得のことしか頭にないからだ。研究者が声を大にして主導していくしかない、と思う。