景観の生態学的修復と創造

企画者:鎌田磨人(徳島大学),江崎保男(兵庫県立大学),藤原宣夫(岐阜県立国際園芸アカデミー)

「景観」とは,異質な生態系がモザイク状に分布する空間の全体的なシステムである.「景観の生態学的修復・創造」とは,地域全体の自然環境を向上させることを共通の目標とし,個々の場で生物の生息・生育環境を構成する要素や,要素間のつながり,すなわち,「生物(生態系)−生物(生態系)」,「生物(生態系)−人」,「人−人」のつながりを再構築していく営みであるとも言える.それを進める上では,生態学会生態系管理専門委員会が示した以下の原則は重要である.すなわち,「地域の生物を保全する」,「種の多様性を保全する」,「種の遺伝的変異性を保全する」,「自然の回復力を活かす」,「多分野の研究者が協働する」,「伝統的な技術や文化を尊重する」,「実現可能性を重視する」である.

このような理念や原則を現場に適用していくためには,事業の計画段階と実施段階それぞれで,現実的な解を与えていくための論理と,それを実現するための技術が必要である.景観生態学会,応用生態工学会,緑化工学会は,その道筋を示そうとしている応用系の学会である.景観生態学会は,「生態的土地利用施策,国土・地域のエコロジカル・プランニング,生態系管理の基礎となる景観生態学を発展させ,その理論やツールを様々な場での問題解決に使えるようにしていくこと」を目指している.応用生態工学会は,「人と生物の共存,生物多様性の保全,健全な生態系の持続を共通の目標に,生態学と土木工学の基礎知識および実際的問題についての研究成果をもとに,両分野の関係者が共同してそれらの境界領域に新しい理論・知識・技術体系を発展・展開させること」を目的としている.緑化工学会は,「景観・生態系の修復に向けて,特に緑を回復するための技術開発に取り組んでいること,また,産業界の会員が多いこと」が特徴である.

本シンポジウムでは,これら3学会の幹事長でもあるオーガナイザーが講演者を集め,「景観の生態学的修復・創造」に向けての現時点での到達点と,これからの課題について検討する.シンポジウム会場が,「実現可能性を重視した,多分野の研究者の協働の場」となることを期待する.