| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-343 (Poster presentation)
アレチケツメイC. nictitans (L.) Moenchは近年東海地方に侵入した国外外来種である。本種はマメ科の一年草であり、日本には近縁の在来種としてカワラケツメイChamaecrista nomame (Makino) H.Ohashiが生息している。安倍川は静岡県を流れる一級河川であり、上流部に大きなダムがないため出水の影響が強く、中流から下流にかけて広大な礫河原が維持されている網状流路の河川である。本研究では、安倍川におけるアレチケツメイとカワラケツメイの2種について、分布調査と発芽実験によって現状と分布特性を明らかにし、今後の動態を予測することを目的とする。
安倍川の本流におけるマクロスケールの分布を調べた結果、2種ともに中流から下流にかけて分布していた。アレチケツメイは多くに地点に分布していたが、カワラケツメイはごく限られた地点でのみ確認された。また、ミクロスケールの分布を調べた結果、アレチケツメイは低水路、高水敷の両方で、カワラケツメイは高水敷でのみ確認された。2種の個体数は全植被率と正の相関が見られた。アレチケツメイは不安定な環境での生育に関して、カワラケツメイよりも適応していると考えられる。
発芽実験の結果、2種に共通して、種皮の物理的な損傷により種子の物理的休眠が打破された。カワラケツメイについては、乾熱によって物理的休眠の打破が促進された。温度による生理的休眠の影響は、15℃恒温条件においてアレチケツメイの発芽率が0.7%、カワラケツメイの発芽率が80.7%となり、有意に差が出た。光条件による生理的休眠の影響は、アレチケツメイの暗黒条件と緑葉透過光条件の発芽率が、明暗条件の発芽率より有意に低かった。アレチケツメイは休眠打破条件が限られており、埋土種子集団を形成する可能性がカワラケツメイより高いと予想される。
カワラケツメイと比較して、アレチケツメイは不安定な環境で休眠打破機構が限られる種子を生産していることが示唆された。