ESJ57 一般講演(口頭発表) F1-02
* 服部 千代子(横国大院・環情学府),大野啓一 (横国大院・環情研院)
都市域の植生景観を群植物社会学の理論に基づいて,分析・評価した研究として唯一神奈川県横須賀市の事例(矢内ほか,2007)がある.この先行研究では,ヤブコウジ−スダジイ群集を潜在自然植生(宮脇,1976)とする横須賀市の植生景観を解析している.
また演者らは2008年から同様の手法を用いてシラカシ群集を潜在自然植生(宮脇,1976)とする横浜市旭区の植生景観の解析を行っている.
本研究では,潜在自然植生を異にする両市において,それぞれの市街地景観と残存緑地景観の組成,構造の違いの有無を明らかにするとともに,その要因について考察した.本研究では市街地の主要構成要素である学校緑地に注目し,緑地景観を比較検討した.
横浜市(シラカシ群集域)と横須賀市(ヤブコウジ−スダジイ群集域)の残存緑地景観と市街地景観の常在度表を用いて比較した結果,植生景観の基本単位である総和群落区レベルにおいて2つの残存緑地およびそれぞれ1つの生産緑地と市街地景観に区分された.このうち残存緑地は,それぞれの潜在自然植生に対応し,横浜市はクヌギコナラ群集=シラカシ群集総和群落区に,横須賀市はクサイチゴ−タラノキ群集=オニシバリ−コナラ群集総和群落(矢内ほか,2007)があった.一方生産緑地は群落区レベルでは分かられなかあったが,下位単位の亜区レベルでそれぞれの潜在植生に対応することが分かった.両市の市外地景観は,総和群落レベルでギンコケ−ツメクサ群集に一括された.亜区レベルレベルで横須賀市の海岸埋立地の都市景観が区分されたが,両市の学校緑地はいずれも下位単位のイチョウ−ヒマラヤスギ植生小区に属することが分かった.