ESJ57 一般講演(口頭発表) F2-08
近藤美由紀*,内田昌男(国環研),村山昌平(産総研),岸本文紅(農環研),柴田康行
日本に分布する黒ボク土を初めとする火山灰性土壌は、炭素含有量が高く、その高い炭素蓄積能が注目されているが、これらの炭素がどのくらいの期間分解されずに蓄積しうるのか、またそのメカニズムの詳細についてはまだ不明な部分が多い。本研究では、アジアモンスーン気候のもと湿潤な環境下にある火山灰起源土壌について有機炭素の蓄積・分解に関する理解を深めるために、放射性炭素同位体分析を用いて土壌炭素の滞留時間の推定を行った。本発表では、5つの森林土壌および耕地土壌で得られた結果を報告する。有機物の分解特性と蓄積の関係を調べるため、バルクの土壌をポリタングステン酸ナトリウムの重液を用いた比重選別によって最大で5つの画分に分け、滞留時間の推定を行った。その結果、短期間(1年以下から数年)で分解される易分解性のものから、安定した状態で数百年から数千年蓄積する難分解性のものまで、蓄積と分解のサイクルが異なる炭素画分が存在することがわかった。これらの知見は、バルク土壌での分析では得られない情報であることから、土壌炭素の分解特性を知る上で重要なアプローチとなることがわかった。高山の冷温帯落葉広葉樹林における土壌の滞留時間は、表層5-10cmで、比重が2.1cc/g以上の高比重画分では150年を超えていた。また、深さ40-45cmの土壌では、2.1cc/g以下の低比重画分でも2000年を超え、非常に滞留時間は長く、長期間土壌中に安定的に炭素を蓄積しうる可能性が示唆された。加えて、土壌呼吸CO2および土壌から採取したCO2の放射性炭素同位体分析の結果とこれらの比較し、土壌呼吸CO2の炭素の起源についても検討を行った。