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ESJ57 一般講演(口頭発表) J1-12

水抜き後の水田の地表性昆虫群集 〜有機農業と慣行農業の比較〜

大脇淳(森の学校キョロロ)


水田は春から夏には一時的な水環境となるが、秋から初春には陸環境となる。これまで冠水期の水田は生物の生息地として注目されてきたが、落水期はほとんど着目されてこなかった。また、近年各地に広まりつつある有機農法水田は慣行農法水田と比べ、落水期の生物群集がどの程度異なるか、十分に調査されていない。本研究の目的は、(1)秋から初春の落水期の水田における地表性節足動物群集を解明することと、(2)農法の違いがこれらの動物群集に及ぼす影響を解明することである。

調査は新潟県十日町市の約2km離れた2地区で行った。荒屋地区では有機水田と慣行水田を4枚ずつ、上山地区では除草剤一回散布水田と慣行水田を2枚ずつ調査した。各調査水田は、収穫後の秋(2008年11月4〜10日、トラップは5日間開放)と入水直前の春(2009年5月1〜3日、2日間開放)に一回ずつ、1水田当り4個の落とし穴トラップを設置して調査した。採集サンプルは水田ごとにまとめ、オサムシ科とコモリグモ科は種か属、その他の生物は主に科か目レベルまで同定した。

調査の結果、684個体の節足動物が採集されたが、67%(461個体)はハエ目成虫であった。ハエ目成虫を除くと、潜在的な益虫であるクモ目(アゴブトグモ、ウヅキコモリグモなど:136個体)とゴミムシ科(オオヒラタゴミムシなど:41個体)が多く、明らかな害虫はイネミズゾウムシの3個体のみであった。農法の影響を種構成と個体数の多い種について調べたところ、いずれも農法の影響は検出されなかった。オオヒラタゴミムシは秋には成虫と幼虫が、春には新成虫が採集されたため、水田は重要な繁殖地であることが判明した。以上より、落水期の水田はクモやゴミムシなどの益虫の重要な生息地であり、春に散布される農薬は落水期の生物群集にほとんど影響しないと考えられた。


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