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ESJ57 一般講演(口頭発表) K1-09

ミズキとサワグルミにおける樹形の違い−枝についての力学的考察

*弓山大輔(京都大学農学部),岡田直紀(京都大学農学研究科)


【はじめに】ミズキは第一次枝が幹に輪生して放射状に展開し、小枝は添伸による伸長様式を取るため階段状の特異な樹形を示す。一方、サワグルミは上部で太い枝が斜上に分枝して卵形の樹形を形成する。両者の樹形の違いについて力学的な視点からその決定要因を探ることが本研究の目的である。

【調査・実験方法】京都大学芦生研究林に自生している両樹種を用いて、枝基部の直径(Db)・枝下部の幹直径(Ds)・枝長(Lb)*1・第一次枝の角度(θ)*2を計測した。サイズの異なる枝を伐採し、その計測値から作成した関係式に基づいて枝の重量(W)・葉面積(Al)を算出した。得られたデータから分岐比(Db2/Ds2)・形状比(Lb/Db)・自重による枝の曲げ応力(σ)・枝基部の断面積当たりの葉面積(Al/Ab)を求めた。また、両樹種の材の強度を比較するために生枝の曲げ強度試験と比重の計測を行った。

【結果・考察】サワグルミと比べミズキの枝は幹に対して細く、遠くへ水平に伸びていた。サワグルミに比べてミズキでは1)σが有意に大きく、2)Al/Abが有意に小さく、3)生枝の曲げ強度(曲げヤング係数・最大応力)と比重が有意に大きかった。この結果から、より平面的に枝を伸ばすミズキの樹形には材の強度が寄与していると結論した。両樹種の樹形の違いは光の獲得の仕方と関係していると考えられる。葉を平面的に配置しているミズキはサワグルミよりも受光効率が良いと予想され、枝基部の断面積あたりの葉面積(Al/Ab)への投資がより小さいが、もう一方で枝の材強度を高めるための投資がより大きい。

*1 枝の基部から先端までの距離 *2 枝の基部とLb/2の点を結ぶ直線が水平となす角度


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