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ESJ57 一般講演(口頭発表) K2-05

クワ科植物の乳液に含まれる多様なアルカロイド類や耐虫性タンパク質類が担う被食防衛機構とスペシャリスト昆虫の適応メカニズム

*今野浩太郎, 平山力, 和佐野直也, 中村匡利, 立石剣(農業生物資源研),竹中真紀子(食総研),小野裕嗣(農水省),大藤康雄(国研センター熱帯島嶼拠点)


クワ科植物(世界で約1,000種うち800種がイチジク属Ficus)は傷口から乳液を分泌する。これらの乳液は昆虫の食害から植物を守る被食防御の役割があったが、乳液中の防御成分はクワ科種間で極めて多様であった。クワ(Morus spp.)では乳液中に高濃度(計2.5%)で含まれる1,4-dideoxy-1,4-imino-D-arabinitolや1-deoxynojirimycin等の糖類似アルカロイド(昆虫のsucrase・trehalase等の糖代謝酵素を阻害し毒性を発揮)および新規乳液タンパク質MLX56(Hevein domainとExtensin domainを有するキチン結合性のタンパク質、0.01%で成長阻害毒性を示す)が耐虫成分であった。沖縄県石垣島自生イチジク属植物では、ハマイヌビワ(F. virgata)・ホソバイヌビワ(F. ampelas)では乳液中の強いシステインプロテアーゼ活性が耐虫性の主因であるが、オオバイヌビワ(F. septica)乳液にはプロテアーゼ活性はなく、乳液中に0.56%含まれるantofine(3-30ppmで顕著な昆虫毒性)等の複数のphenanthroindolizidine alkaloid が耐虫成分であった。クワspecialistのカイコはクワ乳液の糖類似アルカロイドおよびMLX56の双方に耐性を示すが、糖類似アルカロイドに対しては非感受性のsucraseとtrehalaseを発達させて適応していた。以上、クワ科植物の乳液の多様な成分が植物-植食昆虫間生態・進化関係において重要な役割を持つことが明らかになった。


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