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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-089

低地暖温帯林におけるモミAbies firmaの個体群の自然更新過程とその持続性の検証

*沖 宗一郎,山田 俊弘,奥田 敏統(広島大,院,総科)


モミ(Abies firma)は低地暖温帯林から中間温帯林まで分布する針葉樹で、中間温帯林での個体群動態の研究は多い。しかし、広島県の宮島のような常緑広葉樹が優占する低地暖温帯林ではモミの個体群動態の研究は少なく、未だに個体群が自然更新で維持されうるかが明らかになっていない。そのため、本研究では宮島のモミの個体群が維持される持続可能性を評価することを目的とした。

島内に0.6haの固定調査区を設置して年二回(春、秋)、モミの毎木調査(直径、樹高、新規加入個体数)を行い、種子生産の豊凶作年の推移確率行列をそれぞれ作成した。

まず、作成した推移確率行列と現在の個体数を掛けてシミュレーションを行い、50年後と100年後の個体数を算出した。シミュレーションは種子生産の豊凶作が隔年となるようにおこなった。算出した個体数を現在の個体数で割ったものを50年後と100年後の個体群増加率とした。次に、作成した2つの推移確率行列を用いて弾力性分析を行い、推移確率行列の各要素が個体群増加率にどの程度寄与しているかを調べた。

シミュレーションの結果、50年後、100年後の個体群増加率はそれぞれ0.698、0.449で、個体数は大きく減少することが示唆された。推移確率行列では実生や稚樹の死亡率が高かった。弾力性分析では種子の豊凶作に関わらず直径≧100 cmと5cm<直径<20 cmの個体の生存率の寄与率が大きかった。

以上の結果より、宮島のモミの個体数は現在の状態が続いた場合大きく減少すると考えられた。個体数が減少する原因は、実生や稚樹の死亡率が高すぎるため、それ以上のサイズに生長できる個体が少なすぎることだと考えられた。個体数を現在のレベルで維持するためには、何らかの攪乱によって林内の光環境を改善し、実生や稚樹の死亡率を低下させる必要があると考えられる。


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