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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-090

マレーシア熱帯雨林におけるフタバガキ科10種の遺伝構造

*原田剛,名波哲,伊東明,山倉拓夫(大阪市大・院・理),Bibian Diway, Sylvester Tan(サラワク森林研究所)


マレーシアサラワク州ランビル国立公園に設置された52ha調査区において、フタバガキ科3属10種を対象に、個体群の遺伝的多様性および空間的な遺伝構造を調べた。胸高直径30cm以上のフタバガキ科成木1274本の生葉からDNAを抽出し、マイクロサテライト解析を行った。その結果より、飛翔力が強いオオミツバチに送粉される属と、飛翔力が弱い甲虫類に送粉される属の間で、近交係数Fisを比較したが、違いは見られなかった。10種中6種の個体群の空間的な遺伝構造は、空間距離が近い個体ペアは遺伝的に似ており、空間距離が遠い個体ペアは遺伝的に似ていないという傾向を示した。しかし、S.curtisiiの個体群では空間的な遺伝構造は観察されず、逆に、S.ovata個体群では、特に強い空間的な遺伝構造が観察された。S.curtisiiは、遺伝的な多様性が特に低いため、個体の遺伝子型の多様度が低く、空間的な遺伝構造が形成されにくいと考えられた。また、本調査地のS.curtisii個体群は、若齢個体の更新率が悪いが、この原因の一つとして、遺伝子型の多様度が低いため、近親交配が起こりやすく、近交弱勢により若齢個体の死亡率が高いことが考えられる。


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