[0] トップ | [1] 目次

ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-098

モウソウチク・ハチクの現存量と地下茎切断が成長に与える影響

*遠山 千景(名大・農),中川 弥智子(名大院生命農)


里山を中心とする急激な竹林の拡大は、里山の生物多様性だけでなく、生物間相互作用や生態系機能に重大な影響を及ぼしかねない問題である。タケ類はタケノコによるクローン生長を活発に行うため、竹林拡大の解明には地下茎を介した資源配分に関する理解が重要であると考えられるが、大型タケ類に関する生態学的知見は未だ乏しいのが現状である。そこで本研究では、長野県飯田市内5箇所に生育するモウソウチクとハチクを材料として、地下茎の切断がタケノコの生残率に与える影響と、乾燥重量の測定からアロケーションの違いを比較した。地下茎を切断するタケノコについては、タケノコのすぐ横の両側でのこぎりを用いて地下茎から切り離し、地下茎を介した養分・水分の転流を遮断した。乾燥重量については、稈・枝・葉に分けて80度で72時間乾燥させたのち、重量を0.01gまで測定した。その結果、切断処理タケノコの生残率は、モウソウチクのタケノコで太さと生残率の間に有意な関係性が認められた。また、非同化器官(稈・枝)に対する同化器官(葉)の乾燥重量の割合は、モウソウチクよりハチクで大きいことが分かった。以上のことから、太さに関わらず切断処理タケノコの生残率が低いハチクでは、タケノコの生長過程において、地下茎を介した資源への依存度がモウソウチクより高く、その養分はアロケーション割合の高いたくさんの葉によってまかなわれているのかもしれない。また、稈へのアロケーション割合の高いモウソウチクは、太いタケノコにおいて、その内部にハチクより多くの資源を蓄えておくことで、地下茎の撹乱に対する適応性を高めているのかもしれない。


[0] トップ | [1] 目次