ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-100
*馬雁飛(横国大院・環情学府), 大野啓一(横国大院・環情研院)
近年、干潟の環境機能が見直され、干潟生態系の復元にあたっては、植生とその生育環境の対応関係を明らかにする必要がある。ヨシなどは、多くの生態学的研究がなされているが、塩生湿地植物のハママツナの研究例は少ない。また、定着立地などについての知見はまだ不十分である。そこで本研究では、ハママツナ個体群内の生育形態の変異に着目して、生育状況、環境要因、生育可塑性との因果関係を解明した。
本研究は千葉県木更津市の小櫃川河口干潟で行った。ハママツナの生育状況と環境の関係、また生育形態の分化を誘因する条件を温室で再現できるものを検証するため、3種類の立地環境を設定して、サンプリングを移植した。個体長、形態変化、を記録した。調査地から採取した土壌サンプリングを乾燥した後、含水率と粒径組成を算出した。また、各立地に移植実験を行った。生育形態の変化を記録した。結実した時、硬実と軟実の割合を計算した。温室実験の結果、高密度の環境で育ったハママツナは、他の条件より単茎型の比率が多かった。単茎型と分枝型の形態分化は環境に応じて可塑的に生じることを示した。移植実験の結果から、砂防カップを被っているハママツナは比較的に細く生育し、分枝の場所は砂カップなしの個体より高い。
調査地の土壌分析結果からみれば、ハママツナ分枝型の生育地は砂成分が多い砂質土であった。単茎型の生育地はシルト分が多いな微砂質であった。採取した標本を調べた結果、分枝型は単茎型より硬実の比率が高かった。一方、砂質地の土壌は含水率が低かった。するわち、軟実は容易に吸水できないので発芽しにくいと推測される。また、落下した硬実は、種皮が少し傷つきながら砂礫土壌の中へ埋められ、吸水し発芽、定着すると考えられた。一方、ハママツナの分枝型は繁殖戦略として土壌の含水率の低下に適応して硬実の割合が高くなると考えられた。