ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-130
*吉村謙一(神戸大自然科学)
広葉樹林には様々な樹種が生存するが、光合成生産量が樹木の生存・成長にとって重要な役割をはたすため、共存する樹種間で光合成能力の比較が多くの研究でおこなわれてきた。樹種間の光合成特性は光合成能力、葉面積、シュートあたりの葉枚数などの生理的性質と形態的性質が複合して決定される。葉面積あたり光合成量は光合成能力の比較可能な指標として非常によく用いられるが、あまり形態的性質を考慮に入れられることはない。本研究では高木・低木を含む落葉・常緑広葉樹7種の光合成速度を測定して、形態的性質を組み込んで比較した。
調査は2007年と2008年の9月の晴天日におこなった。林冠部の日中最大光量が約1000μmol/m2/s、地上1mでの日中最大光量が約40μmol/m2/sであったため、光量が1000μmol/m2/s(明条件)と40μmol/m2/sのとき(暗条件)の光合成速度をLI-6400を用いて測定した。
明条件のとき、葉面積あたり光合成速度は落葉樹では低木樹種に比べ高木樹種の方が高かったが、常緑樹では高木・低木に差がみられなかった。葉1枚あたりの光合成速度は常緑・落葉ともに高木樹種の方が高かった。さらにシュート1本あたりの光合成速度ではその傾向はより顕著になった。
一方で暗条件のとき、葉面積あたり光合成速度に樹種差はみられなかったが、葉1枚あたりもしくはシュート1本あたりの光合成速度は明条件と同様の傾向がみられた。シュート重あたりの光合成速度は明条件では高木・低木に違いはみられなかったが、常緑に比べて落葉のほうが高く、暗条件では高木に比べて低木のほうが高かった。
これらの結果から、高木樹種は生理的にも形態的にも光合成量が大きくなる形質をもっており、低木樹種は特に被陰環境下で投資コストあたりの光合成効率が高くなる形質をもつことがわかった。