ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-149
*渡利亮司,長嶋寿江,広瀬忠樹(東京農大院)
植物の成長は光環境に大きく影響され,植物は成長するにつれて群落内の光環境に適応した形態へとアーキテクチャを変化させる.植物のアーキテクチャとは受光体制と力学的安定性に関わる外部形態を表す.一般に,植物は茎を長く伸長させると力学的により不安定になる.茎の伸長成長と植物のアーキテクチャは,光環境の違いによりどのように変化するのか,それらは力学的安定性にどのような影響を与えるのかについて調べた.
1年生草本種であるオオオナモミを用いて密度実験を行った.高密度で生育させた群落個体と低密度で生育させた孤立個体の2区画を設けて,植物のアーキテクチャ,茎の伸長成長速度と力学的安定性の違いを解析した.解析するに当たって節間,葉柄,葉から構成されるファイトマーを単位として計測した.
ファイトーマーレベルでの計測において,節間長は群落個体で大きかったが,直径は両個体で大きな差は見られなかった.体積、乾物重は群落個体で大きかった.中位以上のファイトマーの伸長成長が,両個体間のアーキテクチャに違いをもたらしていた.相対伸長成長速度(節間長あたりの節間の伸長成長速度)は両者に大きな差は見られなかったが,上位ファイトマーで群落個体の方が大きい傾向があった.
茎の弾性係数(材の硬さ)は,同一の高さで比較すると群落個体で大きかった.両個体ともに,弾性係数と体積重(体積あたりの乾物重)との間には正の相関があったが,同一の体積重で比較すると群落個体で大きかった.しかし,茎の力学的安定性は孤立個体に比べ群落個体で小さかった.また茎の高さと直径の関係において群落個体は座屈を生じる限界の高さに急速に近づいた.