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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-201

日本産エンレイソウ属植物の種間雑種形成における生殖隔離の非対称性

*前川諒,大原雅(北大・院・環境科学)


植物では、他殖を行う際には花粉の移動を風や昆虫に委ねるため、異種が同所的に生育し、且つ同時期に開花する場合、異種間でも花粉の授受が生じる。通常は各植物の生活史過程で生殖隔離が生じるため雑種形成は妨げられる。しかし、研究対象である日本産エンレイソウ属植物では、エンレイソウ(4x)、オオバナノエンレイソウ(2x)、ミヤマエンレイソウ(4x)の3種を基本種として、種間交雑が生じ、種分化が生じている。

本研究では、エンレイソウ(4x)とミヤマエンレイソウ(4x)の種間雑種ヒダカエンレイソウ(4x)の雑種形成に着目した。先行研究により、エンレイソウとミヤマエンレイソウの間に潜在的な不和合性は高くないものの、実際のヒダカエンレイソウの形成にはエンレイソウが花粉親、ミヤマエンレイソウが種子親として関与していることが明らかになっている。その一因として考えられるのが、ミヤマエンレイソウからエンレイソウへの生殖隔離がその逆方向よりも強く機能していることである。そこで本研究では、一方向性の雑種が形成される要因を雑種種子形成率(接合前隔離)と雑種個体の生存力(接合後隔離)の2つに分けて検証する。北海道千歳市のこの3種が自生する集団において、エンレイソウとミヤマエンレイソウの結実種子を回収し、それぞれの雑種種子形成率(接合前隔離)を調べたところ種子親としてのエンレイソウの寄与は低く、ミヤマエンレイソウからエンレイソウへの遺伝子流動を介した生殖隔離がより強かった。次に雑種の生存力(接合後隔離)に関しては、種子親をエンレイソウとする雑種の方が低く、開花個体にはエンレイソウを種子親とする雑種個体は存在しなかった。このように、ヒダカエンレイソウの形成過程における一方向性の遺伝子流動の存在は、ミヤマエンレイソウからエンレイソウの遺伝子流動における生態的、遺伝的生殖隔離が強いために生じていると考えられる。


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