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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-203

周辺環境の違いが東南アジア熱帯のパイオニア植物 Dillenia suffruticosaの繁殖成功に及ぼす影響

*徳本雄史, 松下通也, 中川弥智子(名大・生命農)


東南アジア熱帯雨林は急速に消失・劣化しており、それに伴った生物多様性の減少は地球環境問題の一つとして大きく注目されている。種数の減少は、動植物の種構成だけでなく生物間相互作用にも影響を与えることが予測される。東南アジア熱帯雨林を構成する植物のほとんどが虫媒であるため、人為的な森林利用は送粉昆虫の種組成や植物の繁殖成功を左右すると考えられるが、まだよくわかっていない。そこで本研究では遷移が進んでいない森林や林縁などの明るい場所を好むパイオニア樹木Dillenia suffruticosa(ビワモドキ科)の繁殖成功(結果率、結実率)と、訪花昆虫を調べ、周辺環境の違いが訪花昆虫群集と植物の繁殖成功に及ぼす影響を評価することを目的とした。

調査地はマレーシア・ランビルヒルズ国立公園(原生林)と周辺の焼畑休閑林、残存林や焼畑休閑林などがモザイク状に点在するバカム造林試験区周辺の3地点で、対象樹種は共通して生育している。D. suffruticosaは東南アジア熱帯に広く分布し、常に開花している樹木である。調査はそれぞれの調査地で対象個体の果実をマーキングした後、定期的に繁殖器官数を計測し、成熟した果実は回収・乾燥させ、中の成熟・未成熟種子数を計測した。送粉昆虫もそれぞれの調査地で1日当たり6〜11時までの1時間に30分間、全体で39日採集した。

結果は、訪花昆虫は3つの調査地の中において原生林で種数と個体数ともに最も高かったが、有意な傾向は見られなかった。結果率・結実率ともに原生林で高い値を示したが、特に有意な傾向は見らなかった。

本研究で対象としたD. suffruticosaについては周辺環境が送粉昆虫の種組成や植物の繁殖成功にあまり大きな影響は与えていなかった。本大会ではさらなる議論をする予定である。


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