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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-212

サトイモ科植物マムシグサの性転換の動態と繁殖との関係

*大松ちひろ,大原雅 北大・院・環境科学院


サトイモ科の林床性多年生草本マムシグサは、複数の花が苞で包まれた花序を1つつける。この植物は、開花段階に到達後、個体サイズ(資源量)の増加に伴い雄花をつける雄から雌花をつける雌へ、一方個体サイズの減少に伴い雌から雄へと変化する可逆的な性転換を行うことが知られている。

一般的に植物では、雌個体(器官)の方が果実や種子などを生産するため、雄個体(器官)に比べて繁殖にかけるコストが高いと考えられている。そのため、マムシグサの個体サイズの減少に伴う雌から雄への性転換は、前年の種子生産への資源投資量に大きく影響を受けていると予想される。

そこで本研究は、マムシグサの性転換の動態と繁殖との関係を明らかにすることを目的として行った。調査は、北海道恵庭市郊外の自生地集団で2008・2009年の2年にわたり行った。まず、集団内に50m×50mの調査区を設置し、調査区内の全有性個体(08年194個体、09年260個体)の性別、偽茎直径(個体サイズ)、種子生産数を経年記録し、性転換の動態を調査した。また、種子生産量を操作するために雌に強制受粉処理と袋掛け処理(種子生産を阻害)を施し、各処理個体の偽茎直径と性別を経年記録し、種子生産量(資源投資量)が翌年の性転換に与える影響を調査した。

その結果、調査区内の個体の経年調査より、2008年の雌のうち約半数が翌年雄へ性転換しており、それらは性転換が認められなかった雌より種子生産数が有意に高かった。また受粉実験より、強制受粉処理を施した雌(種子生産量多い)は、袋掛け処理を施した雌(種子生産なし)より、翌年個体サイズが減少するとともに、雄へと性転換する傾向が認められた。

これらより、マムシグサの雌から雄への性転換は前年の種子生産量に影響を受けており、個体の繁殖成功の変異が集団の雌雄の性比の決定に影響を与えている可能性が示唆された。


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