ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-246
*國弘忠生(愛媛大・CMES),大森浩二(愛媛大・CMES),伊藤克敏(愛媛大・南水研),堤 裕昭(熊本県大・環境共生)
魚類給餌養殖は閉鎖性内湾水域において盛んに行われているが、残餌や糞などの大量の有機物が海底に沈積していることが指摘されている。堆積した有機物は、微生物の働きにより分解・資化、無機化されており、質の異なる有機物の負荷により微生物相は変化すると考えられる。そこで本研究では、堆積物中の養殖場由来有機物と微生物相の関係を解析した。
愛媛県南宇和郡愛南町南部海域の魚類養殖場内外において、2008年7月と2009年2月に、底質調査(底質表層~1cm)(全有機炭素量(TOC)TOC、炭素・窒素安定同位体比)、キノンプロファイルを指標とした微生物調査を行った。キノンプロファイルは、微生物の持つ電子伝達物質の一つであり、この量は微生物バイオマスを、キノン種の違いは微生物群集の違いを表す。堆積物中の養殖由来有機物量(AOM)は、調査海域の養殖魚に与えている主要な餌、養殖魚の糞、堆積物の炭素・窒素安定同位体比から算出した。
堆積物のAOMと従属栄養微生物バイオマスに正の相関が認められた。TOCの低い地点ではユビキノン(UQ)-8存在比が最も高く、これは硫黄酸化細菌やアンモニア酸化細菌などのBetaproteobacteria門に属する細菌群が堆積物中に優占して生息していることを示している。TOCの増加に伴い優占キノン種はUQ-8からAlphaproteobacteria門に属する細菌群が持つUQ-10に変化した。これらのことから、養殖由来有機物の堆積に伴ってBetaproteobacteria門に属する細菌群からAlphaproteobacteria門に属する細菌群が優占する群集構造に変化することが明らかになった。