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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-268

沿岸域の景観多様性が生物生産と食物網構造に及ぼす影響

*堀 正和(水研セ・瀬戸内海区),田中義幸(横浜市大),宮島利宏(東大・海洋研),吉田吾郎,浜口昌巳(水研セ・瀬戸内海区)


沿岸域は大型海藻類など,その場の生息環境を制御する基盤種が卓越する海洋生態系であり,様々な基盤種が複雑な景観構造を呈する.沿岸生物は広域な分布範囲を移動しつつ自身に適した景観構造を利用するため,その生物生産は景観構造に強く影響を受ける.近年では水質汚染などによりハビタットの消失や景観構造の変化がおこり,景観多様性が大きく減少している.一般に景観多様性が高ければ,景観要素間の生産性の異質性・非同調などによる補償作用が生じ,景観レベルでの生物生産は高くなることが予測されるため,景観構造の人為的改変は生物生産の変化を引き起こしているはずである.そこで本研究は景観多様性の減少が生物生産に及ぼす影響について,野外調査と操作実験により検証することを目的とした.沿岸域の主要景観要素すべてがそろった対照海域から順に景観多様性が減少した海域までを調査し,ベントス群集と魚類の現存量の比較を行った.次に野外群集を再現したメソコスムを用いて景観多様性を操作した実験区を作り,生産量の変化を一年間測定した.また食物網構造の変化を推定するために,生産量の測定と同時に安定同位体の分析も行った.野外調査の結果では,対照海域で魚類の現存量が最も高く,景観多様性の減少に伴って低くなった.操作実験の結果では,魚類とベントスの年間生産量は景観多様性が最も高い実験区で高くなったが,季節によって生産量が高い景観要素は異なっていた.また,大型植物に由来するPOMの増大が生産量の増大と食物網構造の変化に最も貢献していた一方で,同位体分析結果ではそのPOM自体は同化されておらず,微細藻類やバクテリア等の関与が推測された.講演ではこれらの結果に基づく,いくつかの仮説を紹介する.


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