ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-280
小椋純一(京都精華大・人文)
黒色土は草原由来の土壌である場合が多いと考えられるが,非黒色土地帯でもかつては草原であった所もある。そのようなところがどれほどあったかわかれば,しばしば火入れを伴ったかつての草原の実際の広がりが明らかになるはずである。
京都市の市街地北方に位置する花脊峠付近は,いわゆる黒色土地帯ではないが,一部に黒色土が見られるところがある。その付近の黒色土と非黒色土との比較などにより,その地域におけるかつての草原の広がりを明かにするために,新たに黒色土1地点,非黒色土2地点についての微粒炭分析を行った。
上部から5cmごとに採取した土壌試料は,それぞれ1g(乾重)を水酸化カリウム溶液(10%),過酸化水素(6%)などで処理することにより微粒炭を抽出した。抽出した微粒炭は,それぞれ500μm,250μm ,125μmのメッシュの篩を用いて篩分けし,主に125μmのメッシュの篩に残ったものを700倍の倍率で100個撮影し,その後表面形態ごとに分類して検討した。また,それぞれの試料中の微粒炭量を測定した。一方,(株)パレオ・ラボに依頼して土壌のAMS年代測定を行った。また,黒色土と非黒色土の試料の一部について,それぞれの土壌を構成している鉱物の粒径などを調べた。
その結果,今回対象とした非黒色土にも黒色土中に含まれる程度の量の微粒炭が連続的に含まれること,微粒炭が一定量以上出現する年代は非黒色土よりも黒色土の方がかなり古いことなどが明らかになった。こうして,非黒色土地点では,微粒炭を含む土壌が累積的に堆積するようになった年代は,黒色土に比べ新しいものの,その土壌と黒色土に含まれる微粒炭との比較などから,非黒色土地点でも黒色土地点と同様に,火が入ることにより維持された草原的植生が,かつて長期にわたり見られたものと考えられる。なお、非黒色土と黒色土では、土壌を構成している鉱物の粒径などに違いが見られた。