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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-287

長野県上伊那地方の立地環境が異なる水田地域における植物相の構造

*渡辺太一(信州大・農), 大窪久美子(信州大・農)


近年,水田地域は絶滅危惧種を含む多様な植物種の生育地として高く評価され,これまでにも水田雑草群落や畦畔草地,溜池植物,放棄水田など各環境における植物種や群落保全に関する研究がなされている.しかし,地域スケールで植物相の多様性を把握し,その成立条件について解明した研究はほとんどない.そこで,本研究では立地環境の異なる水田地域において植物相の構造を把握し,土地利用や管理形態との関係性を明らかにすることを目的とした.

調査は長野県上伊那地方の4タイプ5つの水田地域(未整備・中山間地のA地域と同B地域,整備・中山間地のC地域,未整備・市街地のD地域,整備・市街地のE地域)において,それぞれ500m直径円内を対象範囲とした.植物相調査は2009年6月から11月にかけて毎月実施し,各水田地域の水田や畦畔,法面,畑,水路など各環境に出現する全植物種の被度とフェノロジーを記録した.立地環境条件としては地域の土地利用状況について現地踏査を行った.

その結果,出現種数は未整備・中山間地のA地域で271種,同B地域で269種,整備・中山間地のC地域で230種,未整備・市街地のD地域で276種,整備・市街地のE地域で199種であった.未整備地域では約270種が出現し,出現種数が多かったが,整備・市街地域では少なかった.中山間地の帰化植物率は市街地に比べて低く,また未整備地域は整備地域に比べ在来植物の出現が多かった.特に,中山間地域にみられる棚田法面には,地域植物相の約7割が生育しており,棚田法面のみに出現する種も多数確認された.これらの多くが希少種を含む草原性植物であり,草地環境の割合が高い棚田法面は,水田地域植物相の多様性維持に大きく貢献している可能性が指摘された.発表では,環境区分ごとの種数−面積や生活型組成,水田管理状況もふまえ,植物相構造と土地利用との関係を考察する.


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