ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-308
*今 博計,真坂一彦,鳥田宏行,菅野正人(北海道林試)
林業の採算性の悪化や山村の過疎・高齢化を背景に,人工林を伐採したあと再造林を行わない林地が全国的に増加している。なかでも北海道は多くの再造林放棄地がみられ,その面積は約9千haで全国の52%に達している。このような林地の増加は,水土保全や木材生産などの森林機能の低下を引き起こすことから,再造林放棄地を速やかに森林化するための対策が求められている。そこで本研究では,放棄地が急増している北海道の十勝南部を対象に,放棄地の植生回復状況を調べ,植生の成立過程を検討した。調査地は伐採後3年から9年を経過したカラマツ林伐採放棄地9カ所を選んだ。調査地の面積は0.2から8.68haで平均3.9haである。尾根から沢まで様々な立地環境で植生回復状況を調べるため,各放棄地に5m×5mの方形区を1から17プロット,計63プロット設置した。なお,このうち4プロットは,伐出路での回復状況を評価するため伐出路跡地に設置した。出現した樹高1.3m以上の木本種について樹高,胸高直径を測定した。胸高直径の測定結果から,各プロットにおける樹種別の相対優占度(RBA)を算出し,この値を用いて群平均法によるクラスター分析を行った。類型化された植生タイプについては,優占種判定法から判定した。クラスター分析の結果,9群に分類することができた。各分類群は,低木種が優占するタラノキ型,ノリウツギ型,陽性の先駆種が優占するエゾヤマハギ−シラカンバ型,前生樹が優占するミズナラ型,アオダモ−ミズナラ型,渓畔性の広葉樹が優占するハシドイ−ハルニレ型,ヤチダモ−タラノキ型,伐出路に成立するケヤマハンノキ型などに分類され,撹乱,前生樹の有無,地形などにより様々な植生タイプが回復していることが示された。ただし,なかには早期に森林化が望めない放棄地もあり,解消に向けた取り組みが必要と考えられた。