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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-326

四国小田深山渓谷における林冠木の動態

愛媛大学農学部 *配川幸一,神岡新也,嶋村鉄也,二宮生夫


小田深山は愛媛県の南東、高知県との県境に位置する。この地域では長い間林業が営まれてきたが、自然保護のために渓谷沿いや尾根筋の森林は残されている。本調査は本地域を流れる黒川沿いにおける自然林の林冠木の動態を解明することを目的とした。

調査地は標高約800mに位置し、1986〜1995年の10年間の年平均気温、年平均降水量、WI、CIはそれぞれ9.7℃、2476mm、74.0℃・月、−17.3℃・月でブナ帯に属する。調査は黒川本流沿いに30×90mの調査区を3ヶ所設置し、胸高直径1cm以上の個体について、種同定、胸高周囲長と位置の記録をおこなった。林冠木の優占樹種であるモミ、ケヤキ、ナラ類については生長錘を用いた樹齢解析をおこなった。

M-w図(HOZUMI 1975)の結果から、本林分は4つの階層に分かれることがわかった。最上層に出現した樹種を林冠樹種とし、出現数の多いモミ、ケヤキ、ナラ類の3樹種についての動態解析をおこなった。胸高直径の頻度分布はモミがL字型を示したのに対して、ケヤキとナラ類は山型を示した。

樹齢解析の結果から、これら林冠木の3樹種は同齢の個体群に分けられることがわかった。同齢個体群はモミの150年・50年生の群、ケヤキの200年・100年生の群とナラ類の200年・100年生の群がみられた。モミの同齢個体群については、150年生の群が200年生のケヤキと、50年生の群が100年生のナラ類と同所的に分布していた。また、モミの150年生の群と50年生の群が同所的には分布していないことから、モミの更新は林冠広葉樹群が成立した後に、広葉樹樹冠下で一斉に更新すると考えられた。また、ケヤキとナラ類の同齢個体群の樹齢がほぼ同じであることから、これら2樹種は地滑りや風倒などの大規模攪後に一斉更新すると考えられた。


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