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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-334

山火事・山焼き跡地からの植生回復にニホンジカが及ぼす影響

奥田雅章(岩手大院・農)


撹乱は森林の更新に重要な役割を果たしているが、火災や山焼き後の植生回復に関する報告は数が限られている。一方、近年日本各地でニホンジカによる植生回復阻害の実態が明らかにされているが、火災や山焼き後の植生回復にシカが及ぼす影響について明らかにされた研究は更に限られる。2008年4月、岩手県釜石市の山林でおよそ160haを焼く山林火災が発生した。この場所は、ニホンジカが高密度で生息している五葉山に近接しており、近年林業被害の拡大が懸念されている場所である。2008年6月、落葉広葉樹林の樹冠下で火災によって林床リターが一掃された場所と燃焼を免れた場所にシカの防除柵を設置した。燃焼シカ柵内区、燃焼シカ柵外区、非燃焼シカ柵内区、非燃焼シカ柵外区の4つの試験区内で更新してきた木本実生の生存や成長の違いを追う事で、山林火災後の適切な森林管理への基礎的資料を得ることを目的とした。

実生の種類はシカ柵の内外で違いは見られなかったものの、燃焼区と非燃焼区で違いが見られた。最も出現数の多かったウリハダカエデの累計実生数を比較したところ、非燃焼区の累計実生数は燃焼区よりも有意に多かった。しかし生存率については、燃焼区に発芽したウリハダカエデの生存率は100%、非燃焼区では33.3%と低くなったことから、燃焼区で生存率が高いことが分かった。林床に密生しているミヤコザサは、火災直後には燃焼区のササ桿数が非燃焼区よりも有意に少なかったが、7月には燃焼区のササ桿数は2倍に増え、非燃焼区よりも多くなった。通常、林床リターを排除するような撹乱は新しい実生の侵入の手助けになることもあるが、今回の火災は種子散布後に起きたものであり、出現する実生数は火災によって負の影響を受けた。しかし出現後の生存率には正の影響があることが示唆された。今後はササの回復も実生の生存に影響を与えると思われ、推移を見守っていく必要がある。


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