ESJ57 一般講演(ポスター発表) P1-340
*國永知裕(京都府大・院・生命環境),平山貴美子(京都府大・院・生命環境),嵜元道徳(京大・フィールド研),松田陽介(三重大・院・生物資源),奥田賢(京大・フィールド研),高原光(京都府大・院・生命環境)
北半球中緯度地帯には針広混交林が広く分布し、針葉樹と広葉樹が様々なスケールのパッチを形成し混交している。既往の研究では、針葉樹と広葉樹では樹冠の作り出す光環境やリターの質が異なり、こうした違いが後継樹の更新に影響しパッチ形成に寄与していることが指摘されている。
日本の冷温帯多雪地帯にはスギとブナを中心とした落葉広葉樹が混交した森林が見られる。発表者らは樹冠の違いが後継樹の更新に与える影響に着目し、スギとブナの混交メカニズムを解明しようとしている。2008年度に人為撹乱の記録のない冷温帯スギ・落葉広葉樹混交林に40×40mの調査プロットを設け、ブナ実生・稚樹のサイズ構造や分布と樹冠の水平空間構造との関係を解析した結果、ブナの更新サイトはブナ樹冠の外側約5m以内の範囲であることが明らかとなり、2009年度新たに設けた45×45mの調査プロットにおいても同様の結果が支持された。これまでにブナは、齧歯類や菌類による親木からの距離・密度依存的な死亡が報告されている。しかしながら、ここでは樹冠外側の約5m以内でブナの更新に有利な要因が働いていると考えられた。スギとブナでは共生する菌根菌が異なることが知られており、こうした菌根菌との共生がブナの更新に影響している可能性がある。そこで本研究では、従来から重要性が指摘されている光環境と、菌根菌に着目し、ブナ樹冠からの距離と光環境及びブナ実生の外生菌根形成率との関係を調べた。
この結果、ブナ実生・稚樹の分布は光環境との有意な関係は認められなかったが、ブナ実生への外生菌根形成率はブナ樹冠から離れると減少していた。本報告ではこれらの要因とブナの更新サイトとの関係について考察する。