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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P2-036

サンゴ群集の回復を小型海藻が妨げる可能性の検証

*玉井玲子(琉球大・院・理工), 酒井一彦(琉球大・熱生研)


サンゴ礁衰退の地域規模の要因の1つとして、藻食性魚類の乱獲や物質流入などの人為的な影響により、海藻の増加が促進されることが挙げられている。大型海藻が爆発的に増えることでサンゴ群集の回復が妨げられ、大型海藻優占の群集へと相変移が起こるという仮説が広く受け入れられつつある。

この仮説を検証するために発表者が西表島で行った野外実験で、大型海藻だけでなく小型海藻もサンゴの成長を妨げる可能性があることが示唆された。移植したサンゴ小片の周囲からケージによって藻食性動物を排除する野外実験を行ったところ、動物を排除したケージ内では、ケージ外と比べて海藻の現存量が増加し、海藻の存在によってサンゴの成長が制限されることが示された。しかしながらこの時ケージ内に出現したのは芝状藻類であったため、大型海藻の繁茂によって光が遮られるという既存の説明は当てはまらない。光よりも基盤を巡る競争によって、サンゴの成長が妨げられたと考えられる。沖縄のように大型海藻の繁茂が見られないサンゴ礁においては、小型海藻がサンゴ群集の回復を妨げている可能性がある。

そこで本研究は、これまで着目されなかった小型海藻と小型サンゴの基盤を巡る競争関係を明らかにすることを目的とした。サンゴに対して影を作らない小型の海藻でも、基盤を占有することや堆積物をトラップすることでサンゴの成長を妨げるという仮説の下、芝状の小型海藻が多く出現する瀬底島のサンゴ礁にて野外実験を行った。長さ約2cmに切ったサンゴの枝を礁池内に移植し、動物の影響を排除するためケージをかけた。ケージを2群に分け、サンゴの周囲から海藻を除去する処理区と対照区を設けた。

本発表では、競合する海藻の有無による接地面積の拡大の違いを比較する。また、接地面積の拡大と、サンゴの高さおよび枝数の関係を解析し、サンゴの基盤拡大が立体的な成長に及ぼす影響について議論する。


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