ESJ57 一般講演(ポスター発表) P2-061
*松本佑介(大阪大・情), 一ノ瀬純也(JST-ERATO), 森光太郎(大阪大・生), 鈴木弘明(大阪大・情), 四方哲也(大阪大・情)
[目的]細胞内共生は、元々は捕食被食や寄生の関係だったと言われている。しかしその過程を観察し続けたことはない。そのため当研究室では天然で共生関係にない捕食者(テトラヒメナ)と被食者(大腸菌)を実験室内で飼い、その進化の過程を観察し続けようとしている。ここで、原生動物には運動性を持つものも多く、また例え持たないとしても、長期間顕微鏡の同一視野下で飼うことは困難である。よって我々は運動性原生生物であるTetrahymena thermophilaの新たな観察培養技術の開発を目的とした。観察するシステムにはPolydimethylsiloxane (PDMS)で形成したマイクロチャンバーを使用し、まずどの程度増殖できるのか、そして世代時間の1細胞計測を行い、最後に人工共生系の様子を観察した。
[方法]前培養したT .thermophilaを、マイクロチャンバー内の顕微鏡1視野に収まるウェルに1細胞が入るようにセットし、倒立型顕微鏡下で培養観察を行った。
[結果と考察]単独培養時はウェル内での増殖速度がフラスコ内と同等の増殖速度を示すことを確認できた。世代時間は149±35minであり、親子の世代時間の相関と姉妹の世代時間の相関を比較すると大きく異なっていることが分かった。共培養した大腸菌は伸び始め、それに伴ってテトラヒメナ内部にも明らかに食胞のサイズよりも伸びた大腸菌が観察された。取り込まれた大腸菌は数時間内に消化されてしまうが、共培養を長期間行うことで消化までの時間が延びたり、細胞質内に移動したりなど他の共生種と同じような変化(垂直伝搬など)が見られると考えられる。