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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P2-108

コイ科カマツカ隠蔽種群の二次的接触域における分布および交雑パターンモデリング

*富永浩史, 渡辺勝敏(京大院・理)


種分化は生物多様性を創出する中心メカニズムである.異所的に種分化した近縁な生物種が二次的に接触したあと,生殖隔離が成立して共存するか,もしくは交雑により融合するかは,種分化の後期過程として重要である.私たちは,日本産淡水魚を代表する広域分布種であるコイ科カマツカ(Pseudogobio esocinus)に,遺伝的に大きく分化した3つの系統が含まれていることを明らかにした.そのうち2系統は西日本で分布域が重複しており,同所的に現れる水系や地点が存在する(Tominaga et al. 2009).この2系統は,異所的に分化した後,二次的に接触したものと推察される.ミトコンドリアDNA(mtDNA)と核DNAの3領域を用いた予備的な解析では,mtDNAと核DNAの系統は基本的に一致し,両者は遺伝子流動に制限がある同所的な隠蔽種であることが示唆された.さらに,両者の間には形態的差異が認められるばかりでなく,同所的に分布する水系において流程分布やマイクロハビタットを違えていることが示唆されている(片方は上流寄りの流れの早い環境,もう片方は下流寄りの流れの緩い環境によく出現する).一方で,交雑由来と考えられる個体も出現し,その出現頻度は地点によって異なっていた.私たちは,これは両者の環境選好性が異なり,各地点の環境条件の違いによって,共存する,片方のみが生息する,もしくは交雑するかが決定されているためではないかと考えた.そこで,仮説検証の第一段階として,カマツカ隠蔽種群の二次的接触域内の複数の河川で,両者の分布および交雑について調査を行なった.そして,河川勾配や河川規模,標高などの環境をパラメータとして生息地モデリングを行なうことで,両者の環境選好性の違いについて,および分布・交雑パターンにどのような環境条件が関連するのかについて検討した.


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