ESJ57 一般講演(ポスター発表) P2-135
*堀 翔(筑波大・生物), 渡辺 守(筑波大・生物)
イヌガラシは春から秋に成長を続ける人里植物で、路傍や田畑の畦に多く、強い刈り取り圧を受けている。そのため、地上部を刈り取られても、直ちに芽吹いて抽台し、開花する傾向が強く、春から秋まで、常に様々な成長段階の地上部をもった株、すなわち、ロゼット状の株から抽台、開花、結実の株まで存在している。これらの株の現存量や葉質は異なり、それに対応して昆虫類が訪問していると考えられてきた。本研究では、イヌガラシの株の高さと幅を測定し、花序数や花序の成熟度合いから、株の成長段階を6段階に分類した。次に、各株の葉について、葉位と長さ、幅、形態から5種類に分類した。株あたりの葉の枚数や花序数、花序ごとの蕾や花、莢の数を計測した後、各種類の葉や花序で発見した昆虫類を捕獲した。イヌガラシを訪問していた昆虫類は合計10目で、そのうち吸汁性昆虫類が3目、葉食性昆虫類が5目、肉食性昆虫類が4目にわたっていた。株の最も下方にあるロゼット状の葉は、株の成長段階の進行と共に硬くなり、最終的には枯れていった。最も若い株の場合、この葉にはアブラムシ類が最も多く、株の成長段階が進むにつれて減少していった。ロゼット葉の後に展開した2種類の葉も、株の成長段階の進行と共に硬くなり、最も若い株で4目発見された葉食性昆虫類の種数は減少し、最も成熟した株では1目になった。株の上部に位置する2種類の若い葉は現存量が小さいためか、出現した昆虫類の個体数は少なかった。大型の葉食性昆虫類であるシロチョウ類の幼虫やセグロカブラハバチの幼虫、ダイコンハムシは、若い株では大きな葉に多かったものの、莢を多く有し、花や莢の多い成熟した株では花序に多く見られた。肉食性昆虫類の個体数は少なかった。これらの結果から、各昆虫類のイヌガラシ上での生活史を考察した。