ESJ57 一般講演(ポスター発表) P2-147
*小林草平,赤松史一,矢島良紀,中西哲,三輪準二(土研),天野邦彦(国総研)
河川生態系において瀬と淵は異なる生物群集と物質循環機能を持つ場として捉えられているが、特に中下流部では淵での調査が困難である場合が多く、瀬と淵の生物群集と物質循環機能が十分に理解されているわけではない。演者らは愛知県東部に位置する豊川において上・中・下流という流程スケールでの河道特性や底生動物食物網の変化を分析し、下流部における淵の面積的な増加が底生動物の食物起源の流程変化に影響している可能性をこれまでに示した。本研究では、豊川の礫河床の下流部一区間、連続した複数の瀬淵において冬・春・夏に調査を行い、瀬淵における位置と底生動物群集・食物起源の関係について分析を行った。
全底生動物生息量は冬と春に大きく、夏に小さかった。いずれの季節も瀬では流心・岸際の両方で生息量は大きかったが、淵は河床に礫が優占する一部の岸際を除き生息量が小さかった。淵において河床に砂が優占した岸際や水草(オオカナダモ)が繁茂する流心では特に生息量が低い点があった。瀬の流心では付着物食者のヒラタドロムシと濾過食者のシマトビケラが優占し、また淵や岸際でもヒラタドロムシやニンギョウトビケラが優占する場が多く、モンカゲロウやカワカゲロウに代表される堆積物食者が優占する場は淵の岸際の一部に限られていた。これら瀬淵における底生動物生息量の空間分布と群集構造には、流速とともに水草・礫・砂の空間分布が関わっていること、また礫床河川ゆえの特徴を持つことが考えられた。本発表では、底生動物群集の空間分布パターンとともに、底生動物と餌資源の炭素安定同位体比分析の結果をもとに、瀬淵の位置と底生動物の食物起源の関係について議論する。