ESJ57 一般講演(ポスター発表) P2-166
*奥田圭(宇都宮大・院・農),小金澤正昭(宇都宮大・演習林)
1980年代後半から全国各地でニホンジカ(Cervus nippon)が高密度化し,森林植生に様々な影響を与えるようになった.森林性鳥類は,植生と密接な関係があることから,シカの高密度化に伴う植生の改変は,森林性鳥類群集に影響を及ぼすことが予想される.そこで本研究では,シカの高密度化に伴う植生の改変が鳥類群集に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした.
調査は,栃木県奥日光のミズナラ林のシカ密度の異なる3地域,計12地点において鳥類調査と植生調査を行った.鳥類調査によって得られたデータは,TWINSPANにより分析し,出現傾向が類似の種および種組成の似通った調査地点を明らかにした.類似の調査地点をグループとした上で,このグルーピングを被説明変数,各調査地点の植生に関するパラメータを説明変数として正準判別分析を行い,鳥類の種組成と関連の強い環境要因を検討した.
その結果,高木層および亜高木層,低木層の立木密度,草本層の植被率および植生高が鳥類群集の種組成の変化に強く関わっていることが明らかとなった.これらの植生パラメータは,いずれもシカの高密度域で減少する傾向がみられたことから,シカの高密度化に伴う植生の改変は,鳥類群集の種組成の変化に強く関わっていることが示唆された.