ESJ57 一般講演(ポスター発表) P2-176
竹中践(東海大・生物理工)
トカゲ類の雌の繁殖に関するデータは、主として標本の分析と飼育下で産卵させることによって得られる。しかしながら、生息数が減少しているトカゲ類が多くなり、多数の標本の採集は避けるべき状況となっている。また、短期間の調査で得られる少数の標本を有効に生かすことも望まれる。
本研究ではカナヘビ属について、これまで得られた標本のデータを、種や地域集団を区別せずに分析して、繁殖に関する傾向を検出して、少数の標本のデータの繁殖特性を判断することができないかを検討した。
カナヘビ属は、どの種も、卵の世話などの特別な繁殖習性をもたず、年複数回産卵であり、形態は細長い体形であるといった共通の性質をもつ。また、体サイズの極端な種間差もない。分布域も東アジアに限られる。これまでに得られた標本の繁殖雌の頭胴長は46〜78ミリメートルであり、クラッチサイズは1〜8卵の範囲となっていて、緯度との散布プロットに種間境界は見いだせない。それらから、クラッチデータを、種を区別せずに混合して分析することが可能と考えた。
トカゲ類の一般的な性質として、カナヘビ属も、個体が成長しながら繁殖するので、クラッチデータは頭胴長との回帰の残差を用いて分析した。一腹卵数は、高緯度ほど増加する有意な相関と中緯度で高くなる二次曲線回帰の傾向が得られた。卵サイズについては、高緯度ほど増加する有意な相関と中緯度で低くなる二次曲線回帰の傾向が得られた。また、緯度・経度・体長・既産卵数(白体数)等を用いた重回帰分析でも同様の緯度との相関を検出した。それらの回帰を標準として、少数標本のデータについて、一腹卵数や卵サイズの相対的な高低を評価して、その意義を検討した。