ESJ57 一般講演(ポスター発表) P2-197
*岡本美里, 大河原恭祐 (金沢大・自然研)
アリでは多くの種で、繁殖戦略に依存した女王の多型が報告されている。一般に資源が一様に分布した環境下では、交尾飛行・単独創設が、資源がパッチ状に分布した環境下では、巣内交尾・短距離分散を行う傾向があり、後者の場合に女王の飛翔筋の退化や無翅化、体サイズの減少が報告されている。多女王制のウメマツアリ(Vollenhovia emeryi)でも女王の翅多型が観察されており、巣外交尾を行う長翅型女王と、巣内交尾を行い、飛翔能力を持たない短翅型女王を生産する個体群がそれぞれ存在する。系統解析の結果から、短翅型と長翅型女王を生産するコロニー間には遺伝的交流はほとんど無いことが分かっている。しかし、短翅型女王を生産するコロニーからは、まれに長翅型の女王が生産されていることが観察されている。一方でウメマツアリは、通常の膜翅目昆虫とは異なり、女王は単為生殖・ワーカーは有性生殖・雄は父親の核ゲノムのみを受け継ぐ特殊な繁殖様式をもち、カーストごとに生産様式が異なることが分かっている。本研究では、短翅型女王を生産するコロニーから低頻度で生産される長翅型女王の生産意義を調べるため、女王の翅多型と生産様式との関係を調べた。