ESJ57 一般講演(ポスター発表) P2-227
箱山 洋(中央水研), *児玉紗希江(中央水研), 岡本千晶(中央水研), 原田祐子(中央水研), 小関右介(長野水試), 松本光正(中央水研)
無性型のフナは全メスの雌性発生であり、有性型のオスとの配偶行動なしには増殖することができない。一方、クローンのメスだけを生む無性型は潜在的には2倍の増殖率を持つため有性型を駆逐する可能性がある。このことから、フナ類において有性型と無性型が同所的に共存しているのは一つのパラドックスである。同所的共存のためには、 (1)無性型の2倍の増殖率を補完する増殖上の有利さを有性型が持つこと(無性型の低い出生率、無性型の高い死亡率など)、(2)少数派になったほうの増殖率が高くなるような頻度依存淘汰が必要である。実験個体群の長期的な動態を観察し、出生死亡率やその原因を調べることで、上記二つの要素を特定することができれば、共存問題の理解に大きく貢献すると考えられる。そこで、半野外および室内の実験個体群を設立し、その観察を4年間行った。半野外実験個体群では、河川水が流入する約17トンの池を8つ用意した。池底は泥質で水生植物が生えている。池には、餌の落下昆虫や捕食者の鳥等は自由に入ってくるが、魚など水生生物は目の細かい網で侵入できないようにした。この池に、有性型と無性型の稚魚180尾を1:4(4池)もしくは4:1(4池)の割合で導入した。実験は無給餌で行った。室内実験個体群では、通常よりも短時間で世代交代が観察できるように日長・水温を制御した。約2トンの池を7つ設定し、有性型6個体・無性型6個体を初期個体としてそれぞれ導入した。毎日、給餌を行い、人工水草の付着卵をチェックした。半野外・室内ともに、年に一回魚を取り上げて、個体数の推定・測定を行い、有性無性型の比率、体長・体重を測定した。得られたデータから、有性・無性型の間で増加率の違いを比較し、少数者有利の頻度依存性があるかを検証した。