ESJ57 一般講演(ポスター発表) P2-234
*松本幸二(新潟大学 自然科学研究科),箕口秀夫(新潟大学 自然科学系)
多雪地冷温帯林にはヒメネズミ,アカネズミおよびヤチネズミが同所的に生息している。しかし,3種は異なる外部形態や行動特性を有し,相観スケールでは各種の出現場所や出現数とそのパターンに違いがあることが報告されている。2008年に行った相観スケールでの野ネズミ捕獲調査においては,ヤチネズミが特有の林分を好んで利用する傾向がみられた。しかし,野ネズミには大きな個体群の年変動があるため,林分利用状況を把握するには単年の調査では十分といえない。そこで,本報告では異なる林分における3種の野ネズミ個体群の2年間の変動を明らかにする。
調査は,山形県小国町温身平の冷温帯林で行った。本調査地は最深積雪深が3.5mに達する多雪地である。調査地にはブナ林の他,立地に応じてヤチダモ,サワグルミおよびドロノキがそれぞれ優占する林分がみられる。これら4林分に雪崩植生下部に発達している矮性低木林を加えた,5林分に調査プロットを設置した。調査プロットは,各林分に5カ所,計25ヵ所設置した。各調査プロットには野ネズミ生け捕りワナを5個ずつ,十字に10m間隔で設置し,連続4晩の記号放逐法で調査を行った。調査は2008年7~11月,2009年6~11月に行った。
各林分におけるヒメネズミ,アカネズミ,ヤチネズミそれぞれの2年間延べ捕獲数は,ブナ林68,46,1個体,ヤチダモ林43,111,13個体,サワグルミ林65,85,21個体,ドロノキ林89,64,14個体および矮性低木林45,83,7個体であった。ヒメネズミおよびアカネズミの捕獲数に林分間で有意な差が見られ(Kruskal-Wallis検定 p<0.05),ヒメネズミはドロノキ林分,アカネズミはヤチダモ林分をそれぞれ好んで利用していると考えられた。また,2年間の個体群変動は林分ごとで大きく異なる傾向を示した。