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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P2-255

ウシガエルのメタ個体群構造を介した在来種へのトップダウン効果

*武田勇人, 宮下直(東大・農・生物多様性)


分断化された生息地にすむ生物は、メタ個体群構造をとっていることが多く、生息地の連結性が個体群の存続にとって重要であることが広く知られている。しかし、外来種がこのような生息地に侵入した場合、外来種の影響を介して在来種にとって連結性が逆に負に影響する可能性がある。以前から外来種や病原菌の拡散による連結性の負の影響が指摘されてきたが、これまで実証研究はほとんどなく、保全の現場においても考慮されてこなかった。そのため、連結性が外来種のインパクトにどのように影響するかを明らかにすることは、外来種の影響を適切に評価し、外来種管理による在来種の保全策を考える上で重要であると考えられる。

本研究では、外来種のウシガエルの胃内容分析と、ウシガエルおよび在来種のツチガエルの野外における分布調査により、以下の仮説を検証することで、ツチガエルに対する、ウシガエルのメタ個体群構造を介した連結性の負の影響を明らかにすることを目的とした。(1)ウシガエルはカエルを多く捕食している。(2)ウシガエルの分布に生息地の連結性が重要となっている。(3)ウシガエルおよび生息地の連結性がツチガエルに負に影響している。調査は、岩手県一関市の206個の溜池群を対象とした。重回帰分析のモデル選択の結果、連結性はウシガエルの分布に正に効き、ツチガエルの分布にはウシガエルと連結性が負に影響していることが推測された。このことから、種間相互作用を介して、生息地の連結性が負の影響を及ぼすことが示唆された。


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