ESJ57 一般講演(ポスター発表) P2-259
*和田 哲, 竹下文雄, 安良城侑生 (北大院・水産)
テナガホンヤドカリ、ヨモギホンヤドカリ、イクビホンヤドカリでは、オスが交尾・産卵間近な成熟メスに出会うと、そのメスを掴んで持ち歩く交尾前ガード行動を示す。これらの種ではメスの繁殖形質 (産卵期、成熟サイズ、年間産卵回数、個体群内における産卵の同調性など) に種間変異があり、全ての種で、オスは配偶者をめぐる競争と配偶者選択の両方をおこなう。3種間ではメス1個体のクラッチサイズや、その個体間変異の幅、実効性比の時間変動パターンなどが異なるため、オスの配偶者選択の選択基準も異なることが期待される。さらに、同一種でも配偶者をめぐる競争で優位の大型オスと劣位の小型オスでは配偶者の選択基準が異なるかもしれない。そこで、本研究では3種のオスを対象として室内で配偶者選択実験をおこない、大型オスと小型オスの選択基準を比較した。
実験では、野外で採集したガードペアを雌雄別々に用いて、1個体のオスと2個体のメスのランダムな組み合わせを作り、それら3個体を水槽に入れて、5分後にガードしていたメスを記録した。その後、野外のペアごとに飼育して、産卵までの日数および全個体のサイズを記録した。その結果、配偶者選択の選択基準に種内・種間変異が認められた。3種ともに、大型オスはメスの体長に基づく配偶者選択をおこなっていたが、産卵までの日数は選択基準になっていなかった。いっぽう、テナガの小型オスはメスの体長と産卵までの日数の両方を選択基準としていたが、ヨモギの小型オスは産卵までの日数だけを選択基準としており、イクビの小型オスでは、どちらも選択基準になっていなかった。発表では、これらの種内・種間変異の理由を考察する。