ESJ57 一般講演(ポスター発表) P2-315
*寺川眞理(京大・理), 梶田 学(無所属), 阿形清和(京大・理)
食性解析は、野生動物の生態を研究する上で最も基礎的な課題のひとつである。鳥類の場合、連続的な直接観察や食痕探索は難しく、排泄物の分析では消化により形状が変化したものは特定が困難であった。近年、哺乳類や鳥類、昆虫類などの糞を対象にDNAバーコーディングにより食性解明する手法が確立されてきた(Valentini et al. 2009; 松木ら 2008)。そこで、著者らは、鹿児島県熊毛郡屋久島町西部林道周辺の照葉樹林に生息する鳥類を対象にrbcL領域のDNAバーコーディングを用いて食性の解析を行った。本解析に用いた糞サンプルは、京都大学グローバルCOEプログラム「生物の多様性と進化研究のための拠点形成ーゲノムから生態系まで」の屋久島実習にて、2009年9月7日から10日にカスミ網による鳥類の捕獲調査で著者らと学生らによって採集されたものである。糞の解析対象は、キビタキ、コゲラ、ヒヨドリ、メジロ、ヤマガラである。キビタキからは、ヒメユズリハ、ヤマモモ、イチジク属、ブナ科、カキノキ属が、コゲラからはイチジク属とブナ科が、ヒヨドリからはイチジク属とハイノキ属が、メジロからはハマビワ、ヤクシマオナガカエデ、ブナ科が、ヤマガラからはエゴノキ、モッコク、ヒメユズリハ、イチジク属、ブナ科が検出された。果実食鳥類の複数個体の糞から堅果であるブナ科が検出されただけでなく、キビタキからは6月に結実するヤマモモが同一個体の複数の糞から検出された。これらの種が堅果やヤマモモの葉を採食するとは考えにくく、これらの植物種の植食性昆虫を採食し、その昆虫内の植物DNAが検出された可能性がある。