ESJ57 一般講演(ポスター発表) P3-030
*詫間峻一(東大・海洋研),Christopher D. Marshall(テキサスA&M大),楢崎友子,佐藤克文(東大・海洋研)
アカウミガメは一般に、成長の過程でプランクトン食性からベントス食性へと変化すると考えられている。しかし、この食性の変化を引き起こす要因やその時期に関しては、これまでほとんど知見がない。クラゲやサルパなどのプランクトンに比べ、硬い組織を持つ甲殻類などのベントス生物を採餌するためには、より大きな噛む力が必要であると推測される。そこで、本研究では噛む力に着目し、アカウミガメの体サイズと餌生物選択との関係を調べた。対象個体は、東京大学海洋研究所国際沿岸海洋研究センター(岩手県大槌町)を中心に半径50kmの範囲にある大型定置網25ヶ統にて混獲されたアカウミガメとした。生きて混獲された個体は同センターの屋外水槽にて、数日から数週間飼育し排泄物を収集した。また死亡していた個体からは胃内容物を採取した。その結果、2006-8年に38個体からサンプルを入手し、餌生物の同定を行った。また飼育期間中に、圧力計(Kistler社)をウミガメに噛ませて噛む力を計測し、その最大値を記録した。その結果、噛む力は体サイズに比例して大きくなり、最大で1548.3N(SCL = 88.4cm)を記録した。また、排泄物と胃内容物調査の結果、SCLが69.1cm以上の個体からは巻き貝など硬組織を持つ餌生物が検出された。一方、それ以下の小さな個体からは検出されなかった。よって、小さな個体は硬組織を持つベントス生物を摂餌するために必要な噛む力を有していない可能性が示された。すなわちアカウミガメの餌生物選択に物理的制限があることが示唆された。