ESJ57 一般講演(ポスター発表) P3-031
*大久保慶信(宮崎大学・院・農工),高橋俊浩(宮崎大学・農),森田哲夫(宮崎大学・農)
冬季集合や日内休眠は、エネルギー消費を抑える適応行動として、小型哺乳類の多くで越冬時に利用されることが知られている。また、野生下ではヨーロッパモリネズミApodemus sylvaticusなどで、これらの行動が同時に観察されている。冬季集合と日内休眠の複合利用は、エネルギー節約をさらに促すと考えられるが、両者の関係についてはよくわかってはいない。そこで、実験的に冬季条件を作出し、その下で同居個体の有無が日内休眠の発現に与える影響を検討した。供試動物として宮崎県で捕獲したヒメネズミApodemus argenteus成雌個体を用いた。明暗周期8L:16D・気温24℃の環境条件下で12週間予備飼育をし、短日光周期に順化させた。この短日順化期に腹腔内にテレメトリー発信器を埋め込み、術後最低1週間の回復期を設けた後、測定を行った。飼料と水は不断給与し、単独飼育とテレメトリー発信器の埋め込まれていない個体との2頭同居飼育の両条件について、環境温度5℃でそれぞれ2週間、5分毎の体温の測定を行った。32℃以下への体温低下を日内休眠と判断した。前半は順化期とし、後半1週間のデータを結果として採用した。ヒメネズミは、単独飼育で日内休眠に入ることはなかったが、同居飼育では日内休眠を行った。観測日数あたりの休眠日数で示した休眠頻度は、20.4±28.4%(平均値±SD)、全個体数あたりの休眠発現個体数で示した休眠発現率は42.9%だった。単独飼育では全く日内休眠を発現しなかったことから、ヒメネズミにおいて同居個体の存在が日内休眠発現の前提条件である可能性が考えられた。そこで、中性温域下で同居個体の有無が日内休眠の発現に与える影響を把握した。得られた結果を比較しヒメネズミが日内休眠に入る誘導因子を検討した。