ESJ57 一般講演(ポスター発表) P3-057
*小林頼太,吉尾政信,加藤典之,宮下直(東大・農・生物多様性)
佐渡島では,トキの野生復帰が進められ,2008年には第一次試験放鳥が実施された.放鳥されたトキは採餌場所として水田や休耕田などの湿地を利用し,ドジョウやカエルなどの採食が確認された.そのため,湿地における餌密度の決定要因の解明は,今後個体群維持に必要な餌場量の評価や,餌場確保のための水田管理を進めるうえで重要と考えられる.そこで,本研究は餌密度を目的変数,景観や局所要因を説明変数とした統計モデルを作成し,説明変数のすべての組み合わせによるモデルのなかから,AICによる最適モデルを選択することで環境要因の抽出を行った.対象生物は,過去および試験放鳥後にトキによる採食が確認されたカエル類2種[ヤマアカガエル,ツチガエル(黄腹型)]とした.ヤマアカガエルは平野部の山際から山間部の水田,ツチガエルは平野部の水田を生息地として利用することから,異なる景観における水田の餌の代表と考えられる.
ヤマアカガエルは2008年3月の小佐渡地域東部の水田の卵塊数を目的変数,景観要因(周辺の森林面積など)と局所要因(水深など)を説明変数とした.その結果,調査地から半径300m以内に含まれる森林面積や水深,水路サイズを要因として含むモデルが選択された.このモデルを小佐渡地域西部および大佐渡地域に外挿し,2009年3月の実測値をもとにバリデーションを行った.ツチガエルについては平野部に局所分布しており,水深などの個々の水田管理が密度に関係する可能性がある.これらをもとに,トキの採餌環境としての水田管理について考察する.