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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P3-093

サロベツ湿原におけるモウセンゴケ属2種の生態比較 〜繁殖様式、実生定着について〜

*保要 有里,露崎 史朗(北大・環境)


高層湿原に特徴的な種の一つであるナガバノモウセンゴケ(ナガバ)は、サロベツ湿原において個体群の衰退が報告されている。そこで、ナガバ個体群維持に関与する制限要因を、湿原内に広く生育している同属のモウセンゴケとの比較により明らかにすることを目的として研究を行った。ナガバはモウセンゴケに比べ小さなサイズに属する個体数が少なく、ナガバ個体群サイズが小さいのは新規個体の安定供給が行われていないことが一つの原因と考えられた。そのため、花数、種子生産数や種子繁殖個体の割合、越冬芽によるシュート増加数を野外調査した。また5度‐25度条件下において水ストレスを与えた発芽実験では、2種間で発芽率に大きな差がないことが明らかになっているため、発芽後の実生生存率を、温室内での水位操作実験とサロベツ湿原での地下水位が異なる2箇所への移植実験により調べた。

繁殖については、同サイズで比べるとナガバはモウセンゴケより1シュートあたりの花数、種子数、繁殖シュートの割合が全て少なく、不稔果実の割合が多かった。しかし、1シュート当たりの越冬芽数はナガバの方が多かった。したがって、ナガバは種子供給数が少ない代わりに、主に栄養繁殖によりシュートを増やしていると考えられた。一方温室・野外実験のいずれにおいても、水位低下に伴い2種ともに実生生存率は低下したが、ナガバ実生の方がモウセンゴケ実生より生存率が高く、実生の加入が可能であればナガバはモウセンゴケよりも容易に定着できる可能性が示された。


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