ESJ57 一般講演(ポスター発表) P3-098
*布目祐二,竹中千里(名大院生命農)
日本全国には約2300カ所のゴルフ場があり、大半のゴルフ場は約100 haという広大な面積を持つ。ゴルフ場の多くは地価が安い土地を確保しやすい都市近郊の森林域に造成されている。一般に森林域から流出する水は、流下に伴って様々な成分を溶かしこみ、下流域や河口域の生態系において重要な物質の供給源となっている。したがって、森林域にゴルフ場が存在すると、水質に何らかの影響を与え、下流域生態系の物質循環にも関与していることが予想される。これまで報告されているゴルフ場と水質に関する研究は、そのほとんどがゴルフ場で多量に使用されている窒素やリンなどを含む化学肥料や農薬の流出に関するものであり、その他の化学成分、特に微量元素に関するデータはほとんどない。そこで、本研究では、ゴルフ場が水質、特に微量元素含有量に与える影響を明らかにすることを目的とした。
調査地は、三重県北勢地方に位置するゴルフ場3カ所(うち、1カ所は現在閉鎖中)とし、ゴルフ場からの流出水とその上流に位置する森林の渓流水を採取した。採水は2009年5月18日から開始し(現在継続中)、平水時に月一回の頻度で、また、降雨後も行った。採水した試料はpH、ECを測定し、0.4 μmのガラスフィルターでろ過後、ICP-AES、イオンクロマトグラフィー、TOC計を用いて陽イオン、陰イオン、微量成分濃度、有機態炭素濃度の測定を行った。その結果、3カ所全てのゴルフ場流出水において、平水時のFe濃度が森林からの流出水の約5〜50倍と高いことが明らかとなり、特に降雨時には約100倍の濃度が観測されるゴルフ場もあることがわかった。また、Fe濃度とDOC濃度に相関がみられたことから、Feが有機物と錯体を形成して流出している可能性が示唆された。