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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P3-151

竹林ではなぜ林床植生が衰退するのか。

*久家光晴(九大院・システム生命),矢原徹一(九大院・システム生命),大槻恭一(九大・福岡演習林),池松伸也(九大院・工学)


近年、管理放棄されたモウソウチクが森林に侵入・拡大し、林床植生の衰退、景観の悪化、土壌浸食など様々な問題を引き起こしている。中でも林床植生の衰退は生物多様性保全の点から問題である。その原因として光環境と土壌水分環境の変化が指摘されているが、どちらがより重要なのかは分かっていない。本研究では竹林化に伴う林床の光・水分環境の変化を同時に観測し、林床植生の衰退に対する相対的重要性を検討した。広葉樹二次林へモウソウチクが侵入しつつある場所に2m×26mのトランセクトを二本設置し、それぞれを2m×2mのコードラートに分割した。それぞれのコードラートで定期的に、出現する植物の種数と植被率、林冠の開空率、表層土壌の体積含水率を記録した。また一方のトランセクトでは当年生のシロダモ実生の生死を記録した。出現種数または植被率を応答変数、開空率と土壌含水量を説明変数とする一般化線形モデルによる解析の結果、種数に対しては両者ともに有意な効果は検出されず、植被率に対しては土壌含水量のみで有意な負の効果が検出された。芽生え数および芽生えの死亡率に対して同様の解析を行ったところ、発芽数には土壌含水量が正の効果を、死亡率には土壌含水量が負の効果を示した。以上より、林床植生の衰退には土壌水分環境の変化がより大きな影響を与えていると考えられる。次に林床への水分供給を調べるために、二次林、竹林、両者の混交林の三地点で樹冠通過雨量を記録した。その結果、三地点の樹冠通過雨量には違いがなかった。したがって、土壌水分環境の違いは樹冠通過雨量の違いではなく、林床土壌の通水性・保水力の違いによると考えられる。


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